4月28日、日本肺癌学会(理事長:光冨 徹哉氏、保険委員会委員長:高橋 和久氏)および日本肺がん患者連絡会(代表:長谷川 一男氏)は「第三世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬オシメルチニブ(商品名タグリッソ)のDPC出来高算定による保険請求・償還の要望」を厚生労働大臣に提出しました。
目次
オプジーボに続き、タグリッソでもDPC出来高移行への要望書を提出
タグリッソは、ゲフィチニブ(イレッサ)等の既存のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬に対して効果が乏しくなった方に対して、期待されている第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬となります。
日本においても、本年3月28日に「EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性のEGFR T790M変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌」の適応で製造販売承認を受け、近日中に薬価収載される予定です。
タグリッソは、既存のEGFR-TKIよりも有害事象が少ないことが示唆されていますが、実施されている臨床試験でも重篤な有害事象が報告されており、中でも間質性肺疾患が全症例で11例(2.7%)うち死亡例が4例(1.0%)、日本人で5例(6.3%)うち死亡例2例(2.5%)が報告されています。
従って、実地医療において使用する場合には間質性肺炎をはじめとした有害事象の対応のための適正使用推進を心がけることが重要となるとのことです。
現在、タグリッソの薬価は決定しておりませんが、全国のがん診療連携拠点病院の多くがDPC対象施設であることを考慮すると、仮に既存のDPC診断群分類点数に包括化され、タグリッソを入院で使用した費用が包括点数を超過した場合、その超過分は各施設で負担しなければならなります。それにより投与初期の入院治療が事実上行えなくなる懸念があります。
よって、日本肺癌学会では、投与初期に入院で治療を行っても各施設での負担がないようにDPC診断群分類において出来高算定による保険請求・償還が可能となるように要望しました。
包括医療制度と出来高移行タイミングの問題については、以下をご参照下さい。
オプジーボ使用における保険制度上の課題解決へ 肺癌学会と患者連絡会 要望書提出(オンコロニュース2016/1/13)
タグリッソとは
タグリッソは、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬と言われており、EGFR T790m変異選択的チロシンキナーゼ阻害薬となります。
肺がんの中でも最も多い種類となる「非小細胞肺がん」の約1/3がEGFRという遺伝子に変異が認められた患者であり、進行期であればゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)等のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬が使用されますが、いずれ効果が乏しくなります。これは、変異しているEGFR遺伝子が更に変異を起こすことにより(二次変異)、効果が乏しくなります。
こういった、二次変異のうちT790変異Mといわれる変異に対する選択的選択チロシンキナーゼ阻害薬がタグリッソとなります。
タグリッソは国際共同臨床試験(AURA試験)結果から既存のEGFR-TKI治療中に耐性化し病勢が進行したT790M変異を有する肺癌患者に対して、非常に良好な成績が報告されております。
奏効率(腫瘍が一定以上縮小した方の割合):66%(日本人症例では63%)
無増悪生存期間;PFS(腫瘍の進行を抑えた期間):中央値9.7ヵ月(日本人症例でも9.7ヵ月)が報告されています。
この結果を受けてタグリッソは、本年3月28日に「EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性のEGFR T790M変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌」の適応で製造販売承認を受け、近日中に実地医療の場で使用が可能となるものと考えられています。
記事、可知 健太