腎細胞がん(RCC)や子宮内膜がんなどのいくつかの固形がんで、抗PD-1モノクローナル抗体の免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)のにマルチキナーゼ阻害薬レンバチニブ(商品名レンビマ)を併用することで抗腫瘍効果が改善することが示された。米国Memorial Sloan KetteringがんセンターのRobert J. Motzer氏らの研究グループが実施しているフェーズ1b/2試験(NCT02501096)で、中間解析結果が2020年1月21日のJournal of Clinical Oncology誌オンライン版に掲載された。
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キイトルーダ併用時のレンビマ用量を1日20mgに決定
同試験では、2015年7月31日から2018年3月1日までに、米国の7施設で137例が登録された。キイトルーダの用法用量は標準的な21日間隔の200mg点滴静注とし、レンビマは1日1回経口投与した。フェーズ1bでレンビマを用量調整法で投与することにより、キイトルーダ併用時の最大耐容量(MTD)を決定し、フェーズ2ではレンビマの推奨用量をキイトルーダと併用投与した。
フェーズ1b試験ではRCC患者8例、子宮内膜がん患者2例、悪性黒色腫患者1例、および非小細胞肺がん(NSCLC)患者2例の計13例に上記2剤が併用投与された。フェーズ2ではRCC患者22例、子宮内膜がん患者21例、頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)患者22例、悪性黒色腫患者20例、NSCLC患者19例、尿路上皮がん患者20例の計124例に併用投与された。
フェーズ1bで認められた用量制限毒性(DLT)は、グレード3の関節痛、およびグレード3の疲労感で、レンバチニブ1日24mgが投与されたRCC患者の2例、NSCLC患者の1例に認められた。フェーズ1bで次に投与された10例にはレンバチニブの用量を1日20mgとしたところ、DLTは発現しなかったことから、レンバチニブのフェーズ2推奨用量を1日20mgに決定した。
キイトルーダ+レンビマ併用療法の安全性はコントロール可能
安全性解析対象の計137例で、キイトルーダ+レンビマ併用療法で発現する有害事象は対処可能であった。グレード3またはグレード4の治療関連有害事象は67%(92例)に認められ、高血圧(20%)、疲労感(12%)、下痢(9%)などであった。レンバチニブの減量、投与中断の一方、または両方を必要とする治療関連有害事象は85%(116例)に認められ、主な事象は疲労感(26%)、下痢(23%)、高血圧(17%)などであった。レンバチニブの投与中止を余儀なくされた患者の割合は13%(18例)であった。キイトルーダの投与中断を必要とする有害事象は、疲労感(10%)、下痢(7%)、食欲低下(5%)などであった。
キイトルーダ特有の免疫関連有害事象は、グレード3が8%(11例)、グレード4が2%(2例)に認められ、そのうち、特に関心の高い事象とされたのは副腎不全(1.5%)、および大腸炎(1.5%)であった。レンバチニブ特有の治療関連有害事象は、グレード3が33%(45例)、グレード4が2%(3例)に認められ、特に関心の高い事象は高血圧(20%)、AST上昇(2%)、ALT上昇(2%)などであった。
併用療法24週間で奏効率は最大63%
有効性の主要評価項目である治療24週後の奏効率(ORR)をがん種別にみると、RCC患者集団の63%(19/30例)が最も高かった。次いで、子宮内膜がん患者集団52%(12/23例)、悪性黒色腫患者集団48%(10/21例)、SCCNH患者集団36%(8/22例)、NSCLC患者集団33%(7/21例)、尿路上皮がん患者集団25%(5/20例)であった。
RCC患者集団では、2018年3月1日をデータカットオフとする奏効持続期間(DOR)中央値が20.0カ月に達し、無増悪生存期間(PFS)中央値は19.8カ月であった。
レンビマによる分子標的作用でT細胞免疫反応の賦活を促すか
固形がんにおいて、血管内皮増殖因子(VEGF)は血管新生を促進する役割を果たすとともに、制御性T細胞(Treg)などの抑制性免疫細胞集団を拡張することで免疫抑制の方向に誘導していることが報告されている。VEGFがT細胞や樹状細胞に働きかけることにより、腫瘍抗原を十分に提示できなくなることで、固形がん組織では抗腫瘍免疫が十分に機能しなくなると考えられる。また、線維芽細胞増殖因子(FGF)の活性が亢進すると、VEGF阻害作用を有する薬剤に耐性化することも報告されていることから、VEGFとFGFの双方を阻害する治療アプローチの有益性が示唆されている。
レンビマはVEGF受容体(VEGFR)、FGF受容体(FGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)など複数のチロシンキナーゼを阻害するマルチキナーゼ阻害薬であり、特にVEGFとFGFの同時阻害作用が特に治療効果に寄与すると考えられている。マウスの腫瘍モデルでは、抗PD-1モノクローナル抗体とレンビマを併用投与することで、各薬剤の単独投与よりも高い抗腫瘍効果が得られることが複数報告されている。