・未治療のPD-L1陽性(TPS≧50%)転移性非小細胞肺がん患者が対象の第3相試験
・キイトルーダ+ヤーボイ併用療法の有効性・安全性を比較検証
・全生存期間21.4ヶ月、無増悪生存期間8.2ヶ月であり、いずれもキイトルーダ単剤に対して改善せず
2021年1月29日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて未治療のPD-L1陽性(TPS:Tumor proportion score≧50%)転移性非小細胞肺がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法、キイトルーダ+抗CTLA-4抗体薬であるイピリムマブ(商品名ヤーボイ;以下ヤーボイ)併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のKEYNOTE-598試験(NCT03302234)の結果がChris O’Brien LifehouseのMichael Boyer氏らにより公表された。
KEYNOTE-598試験とは、未治療のPD-L1陽性転移性非小細胞肺がん患者(N=568人)に対して3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg+6週を1サイクルとしてヤーボイ1mg/kg併用療法を投与する群(N=284人)、または3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg+プラセボ併用療法(N=284人)を投与する群に1対1の割合で振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)を比較検証した二重盲検ランダム化の第3相試験である。
本試験が開始された背景として、未治療のPD-L1陽性(TPS≧50%)転移性非小細胞肺がんに対するファーストライン治療の標準治療は抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法である。しかしながら、本治療を受けた約50%の患者は2年以内に死亡に至る可能性が別の臨床試験にて示唆され、より効果的な治療法が必要とされている。そこで、標準治療であるキイトルーダ単剤療法に抗CTLA-4抗体薬ヤーボイを上乗せした有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はキイトルーダ+ヤーボイ併用群の21.4ヶ月に対してキイトルーダ単剤群で21.9ヶ月と、キイトルーダ+ヤーボイ併用群で死亡(OS)のリスクが8%増加(HR:1.08、95%信頼区間:0.85-1.37、P=0.74)した。
また、もう1つの主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はキイトルーダ+ヤーボイ併用群の8.2ヶ月に対してキイトルーダ単剤群で8.4ヶ月と、キイトルーダ+ヤーボイ併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクが6%増加(HR:1.06、95%信頼区間:0.86-1.30、P=0.72)した。
一方の安全性として、グレード3~5の有害事象(AE)発症率はキイトルーダ+ヤーボイ併用群の62.4%に対してキイトルーダ単剤群で50.2%と、有害事象(AE)による死亡率はキイトルーダ+ヤーボイ併用群の13.1%に対してキイトルーダ単剤群で7.5%だった。
以上のKEYNOTE-598試験の結果よりMichael Boyer氏らは「未治療のPD-L1陽性転移性非小細胞肺がん患者に対する抗PD-L1抗体薬キイトルーダ+抗CTLA-4抗体薬ヤーボイ併用療法は、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)を改善せず、有害事象(AE)を増加させました」と結論を述べている。