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激化する免疫チェックポイント阻害薬開発 PD-L1抗体×CTLA-4抗体に注力 ~アストラゼネカ記者会見より②~

10月24日、アストラゼネカ株式会社は、デイヴィド・フレドリクソン新社長の就任後初となる記者会見を開いた。オンコロでは、その内容を3部構成で紹介する。

第1回:第3世代EGFR-TKI タグリッソ 薬価収載まで290人までが無償使用~アストラゼネカ記者会見より①~
PARP阻害薬オラパリブ(リムパーザ) 家族性乳がん卵巣がん症候群への効果が期待~アストラゼネカ記者会見より③~

目次

PD-L1抗体×CTLA-4抗体の免疫チェックポイント阻害薬併用に注力

アストラゼネカは、PD-L1抗体デュルバルマブ(Durvalumab)およびCTLA-4抗体トレメリムマブtremelimumabの2剤の免疫チェックポイント阻害薬を有す。

しかしながら、PD-1抗体であるニボルマブオプジーボ)、ペムブロリズマブキイトルーダ)及びPD-L1抗体アテゾリズマブ(テセントリク)に次いでPD-1/PD-L1経路阻害薬としては4~5番手*、一方、CTLA-4抗体にはイピリムマブ(ヤーボイ)が存在する。
*他にPD-L1抗体アベルマブ(バベンチオ)が存在。

その中、「アストラゼネカは、PD-L1抗体単剤療法に注力するのではなく、CTLA-4抗体との併用療法に注力する。すでに非小細胞肺がん、膀胱がん、頭頸部がんでは、デュルバルマブとトレメリムマブの併用療法での臨床試験が最終段階となり、併用療法では最も進んでいる」と、専務取締役執行役員 研究開発本部長 谷口 忠明氏は語る。

更に、これまでの様々な臨床試験結果により、PD-L1陰性患者に対してもデュルバルマブとトレメリムマブを併用することにより高い奏効率が示せる可能性が出てきたとのことだ。

提供:アストラゼネカ株式会社
*縦軸は全奏効率(腫瘍が一定以上縮小した人の割合)。一番右の図に注目。デュルバルマブ単剤では奏効率が低いが、トレメリムマブと併用すると奏効率があがる。ただし、ASCO2015ポスター発表であること、PD-L1陰性症例数が少ないことに注意。

「がん領域」では26試験が実施中

アストラゼネカは、日本において47試験を実施中。うち26試験が「がん」領域となる。

上記のうち、デュルバルマブとトレメリムマブの併用試験は(おそらく)以下の通り。
*リンクは全てJAPIC-CTIにとびます。

進行性又は転移性非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対する一次治療におけるMEDI4736+tremelimumabの併用療法を白金製剤を用いた標準化学療法と比較する第3相無作為化非盲検国際多施設共同試験

白金製剤を用いた1レジメンの化学療法を含む最低2レジメンの全身療法による治療歴を有する、既知のEGFR TK活性化変異及びALK再配列を有さない局所進行又は転移性非小細胞肺癌患者(ステージIIIB-IV)を対象とした、PD-L1発現に応じた単独療法又はtremelimumabとの併用療法としてのMEDI4736と標準的治療を比較する国際多施設共同第3相無作為化非盲検試験(ARCTIC)

再発性又は転移性頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)患者を対象としたMEDI4736単剤療法及びMEDI4736とTremelimumab併用療法を標準療法と比較する多施設無作為化非盲検第3相国際共同試験

再発性又は転移性頭頸部扁平上皮癌患者を対象とした一次治療におけるMEDI4736単剤療法及びtremelimumabとの併用療法を標準治療と比較する第3相無作為化非盲検国際多施設共同試験

切除不能なステージIV膀胱尿路上皮癌患者を対象とする一次療法としてのMEDI4736単剤療法及びtremelimumabとの併用療法を標準治療の化学療法と比較する第3相国際多施設共同無作為化非盲検比較対照試験

切除不能な肝細胞癌を有する被験者を対象に単剤療法及び併用療法として投与したときのMEDI4736及びtremelimumabの安全性、忍容性及び臨床効果を検討する試験

転移性又は再発性の胃腺癌又は食道胃接合部腺癌患者を対象とした、MEDI4736とtremelimumabの併用療法、MEDI4736単剤療法及びtremelimumab単剤療法の第1b/2相試験

激化する免疫チェックポイント阻害薬の併用療法開発

PD-1抗体、PD-L1抗体開発は、単剤療法の試験データが近い未来に出揃い、併用療法へと移行すると考えられる。事実、非小細胞肺がんでは、化学療法との併用結果が続々と発表され、最近発表されたKeynote21試験の結果ではキイトルーダと化学療法併用時の奏効率が55%に達している。また、アテゾリズマブとMEK阻害薬コビメチニブのMSS且つKRAS遺伝子変異を有する大腸がんに効果が期待されている。膵がんに対しては、がんペプチドワクチンとの併用療法が期待され、米国では臨床試験段階である。その他、血管新生阻害薬との併用療法や、4-1BB抗体やOX-40抗体などのT細胞活性としてのアゴスティック抗体との併用療法の開発も進む。一方、PD-1抗体やPD-L1抗体とEGFR-TKIの併用では間質性肺炎のリスクが上昇する可能性が指摘されてきており、上市後に亡くなった方も存在する。

マイクロサテライト不安定性のない転移性大腸がんに免疫療法感度を授ける併用療法 アテゾリズマブ×コビメチニブ World GI2016(オンコロニュース20160707)

非小細胞肺がん 一次治療として、キイトルーダと化学療法併用 奏効率55% 6カ月奏効持続率92% Lancet oncol(オンコロニュース準備中)

ニボルマブ(オプジーボ®)投与後にEGFR-TKIを使用した患者に発生した間質性肺疾患について(日本臨床腫瘍学会20160713)

まさに激化する免疫チェックポイント阻害薬開発ではあるが、人類のがん医療は着々と進んでいるとも読み取れる。

第3回に続く(執筆中)

記事:可知 健太

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