5月29日~6月2日にシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO:あすこ)の年次会議中に報道向けに発表された演題のうちの1つとして、「ある遺伝子修復機能に欠陥があるがん患者に対するペンブロリズマブ(キイトルーダ/キートルーダ)の第2相臨床試験」が米Johns Hopkins University(ジョンズホプキンス大学)のDung T.Le氏によって発表されました。
この試験は、DNAミスマッチ修復機構(以下、DNA修復機構)に欠陥があると免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいのではないかという仮説のもと実施されている試験となり、「DNA修復機構に欠陥がある大腸がん患者:A群」、「DNA修復機構に欠陥がない大腸がん患者(B群)」および「DNA修復機構に欠陥がある大腸がん患者(C群)」に免疫チェックポイント阻害薬であるペンブロリズマブを使用したときの効果を確認しました。
メモ)生まれながらDNAミスマッチ修復機構に欠陥がある方は生涯発がん率が高いといわれています。この1つにリンチ症候群があり、大腸がんの1~5%がリンチ症候群であるといわれています(リンチ症候群の大腸がん患者のことを遺伝性非ポリポーシス大腸がんといいます)。ただし、海外データを含みの割合のため、日本での割合は不明(もっと少ない)とされている。
ポイントは以下の通りです。
1.参加した殆どが2種類以上の薬剤治療を経験していた。また、DNA修復機構に欠陥がある大腸がん患者の85%がリンチ症候群であった。DNA修復機構に欠陥があるその他のがんとしては胆道がん (4人)、子宮内膜がん(2人)、小腸がん(2人)、前立腺がん (1人)、胃がん(1人) であった。
2.腫瘍が30%以上縮小した割合は、DNA修復機構に欠陥がある大腸がん 62%、その他のがんでは60%に達したが、通常の大腸がんでは 0%であった。
3.20週間以上腫瘍をコントロールできた割合は、DNA修復機構に欠陥がある大腸がん 92%、その他のがんでは70%に達したが、通常の大腸がんでは 16%であった。
4.上記、総括するとDNAミスマッチ修復機構に欠陥があることに起因するがんに対して、免疫チェックポイント阻害薬は非常によく効きそうであると期待が持てる。
<オンコロスタッフコメント>
DNAミスマッチ修復機構に欠陥があると、「変異が多くなる(平均1783か所もあるとのこと)→異常なタンパク質を多く作り出す→がん細胞上に敵だと認識するタンパク質が発現する」というスキームができ、免疫チェックポイントを阻害できればT細胞による免疫応答が活性化されるという仮説でしたが。まさにその通りの結果がったと思います。(実際に腫瘍部位へのCD8陽性T細胞浸潤も多く、PD-L1の発現も高かった)。
小規模試験のため、可能性の1つということは脱却できませんが、今後、期待できるものだと思います。(カチ)
The ASCO POST(英語)
ASCO2015 Abstract(英語)
May 30, 2015DOI: 10.1056/NEJMoa1500596 : PD-1 Blockade in Tumors with Mismatch-Repair Deficiency(英語)
この試験の情報:Clinical trials.gov(英語)