腎盂・尿管がんとは
腎臓は、尿をつくる腎実質という部分と尿が集まる腎盂という部分からできています。また、尿管は腎臓と膀胱をつなぐ管であり、腎実質でつくられた尿は腎盂を経て尿管を通り、膀胱へ送られて最終的に排出されています。
尿を排出する経路のうち、腎盂と尿管は上部尿路とよばれており、この部分に発生するがんは、組織学的にも変わりが無く、治療方法にも大きな差がないため「腎盂・尿管がん」とまとめられています。腎盂・尿管がんは、ほとんどが尿路上皮がんと呼ばれる組織型です。
腎盂・尿管がんの原因として挙げられる最大の生活因子は喫煙です。たばこを吸う人は、たばこを吸わない人に比べて腎盂・尿管がんの発症リスクが約3倍に、45年以上の長期にわたってたばこを吸っている人に至っては腎盂・尿管がんを発症するリスクが7.2倍に膨れ上がるといわれています。
腎盂・尿管がんの症状
腎盂・尿管がんの初期症状として最も多く見られるのが血尿です。その次に多い症状としては、側腹部の痛みが挙げられます。これは、がんそのものが大きくなることで尿管が閉塞してしまうことや、がんの進行によって出血が起こり、その部分が固まってしまうことによります。
要は尿の通過が悪くなることで尿がうっ滞し、圧力が高まること(=水腎症になること)で痛みが出るのです。このときの痛みは、尿管結石の痛みと似ているといわれており、強い痛みが発生しますが、時間が経つと慣れてしまう方もいます。
ただ、血尿や側腹部の痛みなどといった自覚症状が現れる場合もありますが、自覚症状がない場合もあります。ほかの病気について調べているうちに偶然腎盂・尿管がんが見つかったというケースがこれに該当し、腎盂・尿管がんの約15%を占めています。
腎盂・尿管がんの疾患情報
腎盂・尿管がんの検査と診断
画像で上部尿路に腎盂・尿管がんではないかと疑われるような場所が存在した場合や、血尿がある場合、尿細胞診で異常がある場合に、尿管鏡検査、逆行性腎盂尿管造影検査などを行って、腎盂・尿管がんであると診断されます。
腎盂・尿管がんの種類と分類
腎盂・尿管がんのステージ(病期)は、「腎盂・尿管・膀胱がん取扱い規約(日本泌尿器科学会ほか編)に記載されているTNM分類がよく用いられ、治療方針の決定にも利用されています。TNM分類は、①T:腫瘍がどのくらい浸潤しているか、②N:リンパ節への転移とその度合い、③M:遠隔転移の有無、といった観点で分類したものです。
腎盂・尿管がんの治療
腎盂・尿管がんの外科治療としては、標準的には腎尿管全摘術が行われます。最近では、腹腔鏡を併用して手術を行うことが多くなってきました。がんの部位によっては、膀胱部分切除術を一緒に行うこともあります。また、画像所見等に応じて、リンパ節郭清術を追加で行うこともあります。
腎盂・尿管がんの手術療法(外科治療)
手腎盂・尿管がんは、ほかの臓器やリンパ節への転移がない場合には基本的に手術を行うことで根治を目指します。腎盂・尿管がんに対する手術としては、腎尿管全摘術が一般的に行われます。腎盂・尿管がんは腎盂や尿管に多発するケースが多く、腎盂もしくは尿管を部分切除して一部を残すと、残した組織に再発してしまうリスクが高いので、基本的には片側を丸ごと切除する手術が行われます。
腎盂・尿管がんの化学療法(抗がん剤治療)
腎盂・尿管がんでは、手術で腎臓~尿管を切除することが主な治療方法ですが、手術によって根治ができる可能性が高いのは、腎盂・尿管がんがほかの臓器やリンパ節に転移していない場合に限られます。診断時に、ほかの臓器やリンパ節にがんが転移していることが判明した場合には、手術ではなく化学療法(抗がん剤治療)を行うことになります。
腎盂・尿管がんの放射線治療
放射線治療は、放射線を用いてがん細胞のDNAに傷をつけることで、増殖できないようにし、がんを治すことを試みる治療法です。がん種によっては頻用される放射線療法ですが、実は腎盂・尿管がんにはそれほど高い効果が見込めません。ただし、手術が困難であったり、他に代替する手段が無いような場合であったり、症状をコントロールするため等で放射線照射を行うことはあります。
腎盂・尿管がんの再発・転移
腎盂・尿管がんの治療後に見られるがんの再発は、膀胱内でがんが再発するという膀胱内再発と、最初のがんとおなじところやそのすぐ近くで再発するという局所再発の2つに大別することができます。診断時や腎盂・尿管がんの手術後の経過観察において、ほかの臓器やリンパ節にがんが転移していることが判明すれば、抗がん剤を用いた化学療法が選択されます。