オンコロでは、がん治療について全国のオピニオンリーダーにインタビューを実施しております。
今回は、国立がん研究センター中央病院の副院長兼呼吸器内科長の大江 裕一郎先生お話を伺いました。第1回のテーマは「PD-1抗体とPD-L1抗体」についてでした。第2回のテーマは「EGFR遺伝子変異陽性患者における免疫チェックポイント阻害薬治療」となります。
前回記事:非小細胞肺がん治療における免疫チェックポイント阻害薬の現状と今後 ~第1回 PD-1抗体とPD-L1抗体の違い~
目次
EGFR遺伝子変異陽性患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の効果は?
オンコロ可知(以下可知):オンコロには、EGFR遺伝子変異陽性患者から「免疫チェックポイント阻害薬を使用したい」という問い合わせが多くあります。なぜ、EGFR遺伝子変異陽性患者には免疫チェックポイント阻害薬の推奨度が低いのでしょうか。
大江先生:免疫チェックポイント阻害薬は、ミューテーションバーデンが大きいがん(遺伝子に複数傷つく過程で発症するがん)に効きやすいと考えられています。非小細胞肺がんであれば、喫煙者がなりやすい扁平上皮がんのようながんです。一方、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんは、EGFRという遺伝子が変異することにより、がん化することがわかっており、遺伝子の傷は少ないです。よって、EGFR遺伝子変異陽性の方には効果が乏しいとされています。
EGFR遺伝子変異陽性患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験データ
可知:臨床試験においても結果が出ているものでしょうか?
大江先生:前回も取り上げたニボルマブのCheckmate057試験、ペムブロリズマブのKEYNOTE10試験、およびアテゾリズマブのOAK試験の結果において、そのことが示唆されており、如何に示します。
全ての試験において、「EGFR遺伝変異陽性症例のハザード比」は「全体のハザード比」を上回っており、中には1を超えるものが存在します(ハザード比は0に近づくほど有効である)。1つの試験結果ではなく、同じような薬剤が似通った結果が出ており、EGFR遺伝子変異陽性患者への免疫チェックポイント阻害薬は効果を発揮しづらいと考えられています。
なお、ALK融合遺伝子陽性患者については、患者数が少ないためデータがありませんが、同じ傾向ではと予想されています。
第3回につづく
記事:可知 健太