8月20日、一般社団法人全国がん患者団体連合会(全がん連)は、「患者申出療養制度に関する意見書」を厚生労働省(厚生労働大臣、中央社会保険医療協議会会長、がん対策推進協議会会長)に提出したと発表しました。
患者申出療養制度とは、日本で承認されていない薬剤であっても、海外で承認されている薬剤且つ患者の申し出により混合診療を認める制度のことです。ただし、該当薬剤費用は全額患者負担となります。詳しくは過去の記事をご覧ください。
【患者申出療養】 医療保険制度改革法案成立 ~承認前薬剤も使用できるように~(オンコロニュース20150530)
この制度は、日本で未承認である海外標準療法を早期に使用できるようになる素晴らしい制度ですが、「金銭的な負担額が増えること」、「日本人で有効性・安全性が証明されていない薬剤を使用すること」及び「薬剤開発が鈍化するおそれがあること」など様々な懸念点があがっています。
今回、全がん連では、そういった問題に対して意見書を提出しています。
内容は以下の通りとなります。(全文転載)
1.科学的根拠に基づいた有効性と安全性が示された治療薬については、薬事承認と保険適用を速やかに認めること
患者申出療養制度は、薬事承認と保険適用が認められるまでの過渡的かつ例外的な制度とし、有効性と安全性が示された治療薬については、患者申出療養制度により保険診療との併用が認められている状態に留めず、薬事承認と保険適用について一定の期限までに速やかに認めることを担保する制度としてください。
2.患者申出療養制度の導入が、いわゆる国民皆保険制度のなし崩し的な空洞化につながらないようにすること
がん患者や家族の経済的負担は、現状でも特に長期にわたり継続して治療を受けている場合等において大きなものがありますが、加えて患者申出療養制度の導入により、有効性と安全性が示された新規治療薬が保険適用されないまたは遅れが生じるとなれば、患者や家族の経済力によって受けられる治療に大きな格差が生まれることが危惧されます。
3.患者申出療養制度の導入にあたっては、対象となる治療薬等の有効性と安全性に十分配慮しつつ、患者が利用しやすい制度とすること
承認後に一定の年数が経過した国内適応外薬など、有効性と安全性が一定程度示されているものについては、患者申出療養制度で患者が負担なく少しでも早く使用できる制度としてください。また、臨床中核病院等における相談体制の充実や、重篤な有害事象が生じた場合の補償体制の整備など、安全性に十分配慮した制度としてください。
4.患者申出療養制度の導入に関わらず、科学的根拠に基づく有効性と安全性が担保された治療薬が、早期に使用できるための制度改正や救済策を検討すること
PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の体制整備等が進められてきましたが、特に難治がん、希少がん、小児がん等で未だ多くのドラッグ・ラグが解消されていません。また、高価な未承認薬等を自己負担で使える患者は限られていることが予想されます。先進医療制度の見直し、アクセス制度の整備、経済的負担の軽減に資する基金の整備等を検討してください。
なお、本意見書は全がん連加盟団体25団体賛同のもと提出されており、8月21日には患者申出制度に対する記者会見を一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会と共に開催したとのことです。
患者申出療養制度に関する全がん連との共同記者会見資料の公表(日本難病・疾病団体協議会HPより)
記事:可知 健太