国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉、所在地:東京都中央区)は、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院および40の国際研究機関と共同で、71の国と地域322の人口ベースのがん登録を用い、2000-2014年の15年間に診断されたがん3,750万症例の生存率に関する国際調査(CONCORD-3*)の結果を公表した。本研究結果は英国学術雑誌The Lancetに1月30日付で発表された。
CONCORD-3*
2000-2014年の15年間に診断された、71の国と地域3,750万症例のがん生存率に関する大規模国際調査で、特定の病院からのサンプリング等によらない、一般人口で比較ができる唯一の統計。
目次
本研究の背景および目的
CONCORD-3は世界のおよそ10億人をカバーし、がん18局在および局在群を対象とする大規模な国際共同研究。CONCORD研究事業は、2008年に発表されたのを皮切りに、第2回の2014年に続き今回で3回目となる。日本は、初回2008年のCONCORD-1から参加してきたが、生存率を算出できる精度水準に到達した都道府県が少なく、またがん登録分野での国際研究への関わり方も受け身であることが多かったため、国際共同研究でのプレゼンスを示せない現状にあった。
今回の共同研究では、研究の企画段階からワーキンググループに参加し、今回用いたデータは、日本の総人口4割をカバー。データの入力、患者の追跡から集計まで国際標準化した値を用いた。さらに、人口ベースの5年生存率は国際標準の手法で算出され、現時点でもっとも国際的に比較可能性の高いものとなった。
調査方法
CONCORD-3は、CONCORD-2を更新した、2000-2014年の15年間に診断されたがん3,750万症例の生存率に関する国際調査である。71カ国(内45は人口を100%カバーする全国データ)、322の人口ベースのがん登録から個別データが提供された。本研究は、がんの18局在又は局在群を対象とした。すなわち、成人の食道、胃、結腸、直腸、肝、膵、肺、女性乳房、子宮頸部、卵巣、前立腺と皮膚の黒色腫、成人及び小児それぞれの、脳腫瘍、白血病とリンパ腫、である。標準的な品質管理が行われ、エラーは各がん登録によって修正された。5年純生存率(net survival)を推定し、推定値は、国際がん生存率加重で、年齢調整した。
調査結果
大部分のがんの生存率が最も高い地域は、従来同様、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェーとスウェーデンであった。生存率は、予後不良のがんにおいても上昇傾向にあり、いくつかの国では、肝がん、膵がん、肺がんでも、最大5%の向上がみられた。東南アジアでは、消化管のがんの生存率が最も高い一方、皮膚の黒色腫、成人のリンパ性・骨髄性悪性疾患の生存率は、概して他の地域より低かった。小児急性リンパ性白血病の生存率の格差は、リンパ腫の格差より際立っていた。小児脳腫瘍の生存率は成人より高く、各国間のばらつきが大きかった。
考察
CONCORD計画は、全世界で毎年診断されるがんの75%、18局在に医療を提供する保健医療システムの、総合的でタイムリーな有効性比較を可能とし、各国のがん対策立案にも貢献する。経済協力開発機構(OECD)は、2017年に、CONCORD-3の結果を、がん生存率の公式ベンチマークとして、世界48カ国を対象とした保健医療の質を評価する指標の一つに採用している。
発表論文
雑誌名 : The Lancet
タイトル: Global surveillance of trends in cancer survival: analysis of individual records for 37,513,025 patients diagnosed with one of 18 cancers during 2000-2014 from 322 population-based
registries in 71 countries (CONCORD-3)
著 者 : Allemani C, Matsuda T, Di Carlo V, Harewood R, Matz M, Nikšić M, Bonaventure A, Valkov M, Johnson CJ, Estève J, Ogunbiyi OJ, Azevedo E Silva G, Chen WQ, Eser S, Engholm G, Stiller CA,
Monnereau A, Woods RR, Visser O, Lim GH, Aitken J, Weir HK, Coleman MP; CONCORD Working Group.
Doi : 10.1016/S0140-6736(17)33326-3
URL : http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(17)33326-3/abstract
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