8月21日、小野薬品工業株式会社は、抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、以下の国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したと発表した。
・がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫への適応拡大
・悪性黒色腫の術後補助療法への適応拡大
・体重換算の用法・用量から固定用量(240㎎)への用法・用量の変更
また、小野薬品工業株式会社とブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社は、オプジーボと抗CTLA-4抗体イピリブマブ(商品名:ヤーボイ)との併用における「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」への適応拡大、ならびに同適応におけるオプジーボの用法・用量の追加に係る国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得した。
目次
悪性胸膜中皮腫について
悪性胸膜中皮腫は、胸腔表面を覆う中皮やその下の結合組織の未分化な間葉細胞に由来する悪性腫瘍となる。
国内では、悪性胸膜中皮腫の総患者数は約2,000人と推定されている。
その発症原因は職業環境及び生活環境から吸入した石綿(アスベスト)との関連が高く、石綿曝露から約30~50年という非常に長い期間を経て発症することが知られている。
悪性胸膜中皮腫に対する初回薬物治療としては、ペメトレキセド(商品名アリムタ)とシスプラチンの併用療法が使用できるが、この併用療法に不応又は不耐となった患者では標準的な治療法はなく、新たな治療法が切望されていた。
その意味で、今回の承認によって、がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫に対してオプジーボの使用できるようになった意義は大きい。
なお、今回の承認は世界で初めての承認となる。
関連記事:悪性胸膜中皮腫(MPM)の二次/三次治療としてのオプジーボ、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)を達成(2017.10.31)
悪性黒色腫について
悪性黒色腫は、皮膚の色と関係が深いメラニン色素の産生能を持つ色素細胞(メラノサイト)ががん化した悪性腫瘍で、皮膚がんの中でも転移率が高く、きわめて悪性度が高いとされている。
日本での悪性黒色腫の患者数は約4,000人となり、年間約700人が悪性黒色腫により死亡していると報告されている。
オプジーボは、既に「根治切除不能な悪性黒色腫」について承認されていたが、今回の承認によって、悪性黒色腫に対する術後補助療法でも使用することが可能となった。
腎細胞がんについて
腎細胞がんは、腎臓がんの一つの型となり、腎臓がんの全患者のほぼ 90%を占めている。
今回の承認によって、化学療法未治療の根治切除不能又は転移性の腎細胞がんに対するオプジーボとヤーボイの併用療法の使用が可能となった。
中リスク又は高リスク未治療進行性腎細胞がん患者に対するオプジーボ+ヤーボイ併用療法、主要評価項目である全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)を統計学的有意に改善(2018.04.04)
オプジーボの用法・用量について
オプジーボ単剤使用の用法・用量に関しては、すでに承認取得している以下の8つの効能・効果についても、1回3 mg/kg(体重)を 2 週間間隔で点滴静注する(点滴静注時間:1 時間以上かけて)用法・用量から、今回の承認によって、1回 240mgを2週間間隔で点滴静注する(点滴静注時間:30 分以上かけて)用法・用量へと変更した。
ただし、「根治切除不能な悪性黒色腫」に対して、オプジーボをヤーボイと併用する場合は、オプジーボ1回 1 mg/kg(体重)を3週間間隔で4回点滴静注し、その後1回3mg/kgを2週間間隔で点滴静注する(点滴静注時間:1 時間以上かけて)用法・用量から、1 回80mgを3週間間隔で4回点滴静注し、その後1回240mgを2週間間隔で点滴静注する(点滴静注時間:30 分以上かけて)用法・用量へ変更となった。
さらに、今回承認された「化学療法未治療の根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」に対してオプジーボをヤーボイと併用する場合は、オプジーボ1回240mgとヤーボイ1回1mg/kg(体重)を3週間間隔で4回点滴静注し、その後はオプジーボ1回240mgを2週間間隔で点滴静注となる。
今回の固定用量への変更の承認によって、これまで体重換算での調剤に比べて利便性が高まるとともに、残薬の問題が解消される可能性がある。
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