厚生労働省の委託事業で企業等におけるがん検診の受診率向上等を目指す「がん対策推進企業アクション」では、このほど企業内の活動活性化を目指す「コンソーシアム」が中心となり、推進パートナー企業および団体3371社を対象に「コロナ禍におけるがん対策の実態調査」を実施し、453社からの回答を開示した。(回収率 13.4%)(内訳:大企業 244社、中小企業 209社)
2020年度のがん検診の従業員別の実態調査では、全体的に「計画通り実施予定」と回答しているものの、胃がん検診や乳がん検診、子宮頸がん検診は「非実施(もともと実施していない)」の企業が多いことが明らかになった。
また、健康保険組合は「実施済み」または「計画通り実施予定」の割合が高く、がん検診の取り組みに前向きな姿勢が見られた。
がん治療中の従業員への対策は、以前から時短・時差出勤、在宅勤務など体調に配慮した働き方を推奨しているものの、大企業、中小企業ともに「がん患者に特化した対応は特に行っていない」と回答した企業が全体の4割(40.2%)を占めた。
コロナ禍におけるがん対策の関心事としては「がんと就労に関すること」が50.6%と最も多く、以下「検査日程の中止・延期・受診方法の健康等に関すること」(43.5%)、「就業規則等、企業の制度面に関すること」(41.3%)と続いている。
目次
調査概要
がん治療中の従業員への対策
コロナ禍におけるがん対策への関心
2020年度のがん検診の実施状況
各部位別検診の実施状況
肺がん検診(胸部エックス線)
全体では肺がん検診(胸部エックス線)を「計画通り実施予定」が41.9%と最も多く、次いで「実施済み」35.5%、「もともと実施していない」9.3%の順となった。
がん検診の実施予定では「平日に実施」が 62.9%で最も多く、次いで「現在調整中」が 20.0%、「土日含め実施」が 17.1%と続いている。
胃がん検診(胃部エックス線)
全体では「計画通り実施予定」が 38.9%で一番多く、次いで「実施済み」28.7%、「もともと実施していない」18.5%、「計画を変更して実施予定」5.7%の順となった。
胃がん検診(胃部内視鏡)
全体では「もともと実施していない」が 41.3%と最も多く、ほかのがん検診と比較すると実施率が一番低い結果となった。
大腸がん検診(便潜血)
全体では「計画通り実施予定」が 44.4%で多く、次いで「実施済み」が34.4%、「もともと実施していない」9.5%の順となった。
従業員別では中小企業、大企業ともに大きな差はみられないが、中小企業で「対応を検討中」が 7.7%と大企業よりも多い結果となった。
乳がん検診
全体では「計画通り実施予定」が39.5%で一番多く、次いで「実施済み」が25.4%、「もともと実施していない」が22.1%と続いた。
子宮頚がん検診
全体では乳がん検診と同様に「計画通り実施予定」が39.1%、次いで「実施済み」24.3%、「もともと実施していない」24.1%の順となった。
がん治療中の従業員への対策
全体では「以前から時短・時差通勤、在宅勤務など体調に配慮した働き方を推奨している」が37.7%で最も多く、次いで「これを機に、時短・時差出勤、在宅勤務など体調に配慮した働き方の選択肢を増やした」の 12.1%が続いた。
しかし、「がん患者に特化した対応は特に行っていない」が40.2%にのぼり、まだまだがん治療中の従業員への対策が不十分であることが明らかになった。
コロナ禍におけるがん対策の関心事項
半数以上の企業(50.6%)が「がんと就労に関すること」に関心を持っていることが明らかになり、次いで「検診日程の中止・延期・受診方法の変更等に関すること」(43.5%)、「就業規則等、企業の制度面に関すること」(41.3%)が続いた。
従業員数別では大企業の101~500 人が「がんと就労に関すること」に関心を持っている企業が多く(61.5%)、全体の値と比較して10 ポイント以上も上回った。
自社での取り組み・質問・要望
自社で検診以外に取り組んだこととしては、「交代出社や自社通勤・時短勤務の実施」や「在宅勤務 WEB 会議の実施」がトップツーを占め、特に中小企業では「交代出社や時差通勤・時短勤務の実施」が 20.9%と大企業の 2.8%を大きく上回る結果となった。
一方、取り組みで困ったこととしては中小企業、大企業ともに「受診控えが増えている/受診率低下が懸念されている」、「中止・延期されていた検診の日程調整が難しい」との回答が多く挙げられた。
社内がん対策についての相談相手
社内においてコロナ対策に限らずがん対策を行う上で参考にしているものや相談している相手について尋ねたところ、トップは「社内(従業員)の要望」が45.9%で、次いで「同業企業」30.5%、「系列グループ企業」24.9%、「社労士」16.6%と続いた。
しかし、中小企業では「特にいない」が22.0%にのぼり、同回答における大企業の9.4%との乖離が大きいことが明らかになった。
また、大企業では「社内の要望」、「系列グループ企業」が全体の結果より5 ポイント以上上回っているのに対し、中小企業では「社労士」を相談相手としている割合が 22.0%と高く、社労士の役割の高さが浮き彫りとなった。
参照元:
がん対策推進企業アクションリリース
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