9月27日、日本肺癌学会、肺がん医療向上委員会、アストラゼネカ社共催の「医療従事者にも知ってほしい肺がん医療in東京」が開催されました。座長は第56回日本肺癌学会学術集会会長である弦間医師(日本医科大・呼吸器内科学分野・教授)。看護師、薬剤師、臨床検査技師やソーシャルワーカーを対象に講演が行われ、200人程度が参加しました。
テーマは「肺癌治療の最新治療とその副作用対策・患者とのコミュニケーション」。4人の登壇者により発表がありました。
1人目は、佐々木治一郎医師(北里大学病院 集学的がん診療センター長)。肺がんの最新治療と題し、がんの基礎的知識から第三世代EGFRチロシンキナーゼや免疫チェックポイント阻害薬までをお話されました。印象的であったのは、免疫チェックポイント阻害薬を暴走族で例え、PD-L1を免罪符と称したのは「なるほど」と思いました。
また、「免疫チェックポイント阻害薬は持続性の長い奏効も注目すべきであるが、非奏効率は通常の化学療法と変わらないことや甲状腺機能障害などは薬剤を中止したあとも副作用が残存する可能性があるといったことは留意しなければならい」と話されていました。私も一般の方への発信側の人間として、気を付けなければならない点だと思います。
2人目は、輪湖正博氏(日本医科大学 薬剤部)。EGFR阻害薬の皮膚毒性へのチーム医療、シスプラチンのショートハイドレーション(通常、入院で対応するシスプラチンを外来使用する支持療法)および今後実施する薬剤師外来についてお話がありました。薬剤師外来は医師による受診の前に薬剤師による聞き取り調査であり、薬剤専門性が高い薬剤師による指導を医師受診の前に実施することは、医療効率性及び副作用等を的確に理解するのにも重要だと考えられます。
3人目は、岡村由美子氏(日本医科大学 緩和ケア認定看護師)。患者・家族とのコミュニケーションについて、看護師の看護師の立場からお話されました。単に傾聴し、共感するのではなく、一人一人のパーソナリティを見極め、患者や家族自らの気持ちになって共に解決策を探すといったプロセスが大切とのことでした。オンコロプロジェクトに携わって、全く患者さんと関わらなかった開発側から患者さんとも接することが多くなり、どう接すればいいのかわからなくなる時があります。「1人の人間として接すればいい」とよく言われますが、こういった講演は参考になると思います。
4人目は、久光重貴氏(湘南ベルマーレフットボールクラブ)。毎回、講演対象によって内容が異なる彼のお話ですが、今回は、患者に対する医療従事者の対応として、「患者が症状を訴えた時に、誰もが同じことを訴えている故に「あー。そういう症状ね」というイージーな反応よりも、一人一人に対して親身に対応してほしい」といって訴えていました。また、「抗がん剤を使っても元気に活動している人がいるということを見せたい。抗がん剤治療に対してポジティブなイメージを皆に伝えるためにフットサル選手を続けたい」という言葉が印象的でした。
上記4人に久保田馨医師(日本医科大学がん診療センター部長)を加えたパネルディスカッション。医療従事者らしい、抗がん剤療法への副作用から患者や家族へのどのように対応すればよいかといった幅広いディスカッションがなされました。
最後に、弦間医師から11月26日から28日に横浜パシフィコにて開催される第56回日本肺癌学会学術集会の告知がされて閉会しました。今回の日本肺癌学会学術集会では、患者・家族向けのプログラム「そうだがん診療の専門家と会ってみよう」も催されます。興味のある方は是非参加してみてください。
参加申し込みはコチラ(日本肺癌学会サイトへ)
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記事:可知 健太