2020年7月10日、株式会社 毛髪クリニック リーブ21(本社:大阪市中央区、以下リーブ21)は、抗がん剤治療による抜け毛・脱毛を防ぐ頭皮冷却装置「セルガード」を、国内で初めて開発したことを発表した。
本製品は、抗がん剤治療の副作用である脱毛の負担を軽減させ、患者のQOLを向上させ、早期の社会復帰の後押しを目的としている。
目次
国内初の製品
抗がん剤治療による抜け毛・脱毛は、抗がん剤を投与する際に、頭部を安定的に冷却し血管を収縮させ、頭部への血液及び薬剤の循環を制限させることで抑制することができると考えられている。
海外では2017年に頭皮冷却装置療法に注目が集まり、導入した医療機関も少なくない。デメリットとして海外製の装置は、欧米人と日本人との頭の形の違いから、海外製の冷却キャップが合わない等の問題が指摘されてきた。
リーブ21では、装置と冷却キャップを一体化し、冷却能力の安定化や日本人の頭部形状に合わせた冷却キャップの研究等に取り組んでおり、国内で治験を重ねて、日本企業としては初めて医療機器としての製品化となった。
2020年3月、薬物療法誘発性脱毛症の抑制を目的とした「セルガード」を厚生労働省より製造販売の承認を取得したことを受け、今年の秋口の発売に向け、全国のがん診療連携拠点病院へプロモーションをかけていく。国内において、2,000台以上の販売目標を掲げている。
乳がん患者に向けた開発経緯
本発表会では、リーブ21 代表取締役社長 岡村勝正氏(上段写真中央)とともに、製品開発に携わった大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 招聘教授 小林忠男氏(上段写真向かって左)、実装協力に携わった独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター 乳腺外科医長 渡邊隆紀氏(上段写真向かって右)の2名が登壇された。
発表会の中で、小林氏は開発動機として、「女性にとって乳がん治療は、告知とともに乳房や毛髪を失う三重の苦しみがあるといわれている。髪の悩みを救う一助になればと、リーブ21からいただく相談や問い合わせに応じてきた。」とコメントしている。
渡邊医長は、「乳がんの特徴として、他のがん種と比べて患者の年齢が若く、検診等で比較的早期乳がん罹患者が増加しており、薬物療法が効きやすいなどが挙げられる。*化学療法を受けた患者さんの脱毛の標準的な経過をアンケート調査した結果、95%の患者さんが頭髪の8割以上が抜け、治療後の再発毛は細いくせ毛から始まり、15%の患者さんが頭髪5割未満の回復であった。再発毛不良部位は、前頭部と頭頂部が圧倒的に多いことがわかった。」と発表された。
*公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンター ヘルスアウトカムリサーチ支援事業 (CSP-HOR)調べ
また、上記 渡邊医長の発表からどの時代にも化学療法の副作用の苦痛として「脱毛」が上位にくることも否定できないことがうかがえる。
本製品は、患者の頭皮温度を氷点下まで下げて維持をすることにより、毛根の周囲の血管を収縮させて、毛根周辺毛細血管に到達する抗がん剤の量を抑制させて、脱毛をしにくい環境にするため、毎回の抗がん剤投与前に30~45分ほど冷やし、抗がん剤投与中、そして投与後の100分ほど冷却させる。
数年前に実施した装着の満足度は、下のスライドの通り、高い結果となった。
小林氏プレゼンテーション資料より
本製品は、現時点では保険適用外、インナーキャップは個人のものとなるため購入の必要がある。
また、本製品を用いることによって『まったく脱毛がおこらない』という結果はまだ出ていない。
今後実装結果のデータ等の収集から、脱毛の副作用がない製品へと将来の改良が期待される。
リーブ21 代表取締役社長 岡村 勝正氏のコメント
「髪に悩む人々に、喜んでいただけることを願い、新商品や新技術の研究・開発を創業以来、継続してきました。そしてその成果の一つが頭皮冷却装置「セルガード」です。抗がん剤投与による副作用に悩む患者様の、お役に立てることは、私たちの大きな喜びであり、誇りです」。
参考ブログ:冷やして予防-抗がん剤の副作用対策-
この記事に利益相反はありません。