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乳がんの再発・転移について

  • [公開日]2018.10.08
  • [最終更新日]2019.01.31

目次

乳がんが遠隔転移した場合

再発とは、乳がんができ始めたころから体のどこかにあった微小ながん細胞が、初期治療でも死滅せずに、あとになって出てきた状態です。手術した側の乳房やその周囲の皮膚やリンパ節に再び腫瘍ができることを「局所再発」、肺、肝臓、骨など離れたところに発生することを「遠隔転移」といいます。乳がんの場合、10年以上経ってから再発する人もいます。

局所再発したら手術へ

温存した乳房内に再びがんが発生したときには、乳房切除術で乳房をすべて切除します。再び乳房温存手術ができるのは、再発腫瘍の大きさと広がりが非常に小さく、初回治療が不十分だったなど限られた場合だけです。
 
乳房切除術後2年以上経ってから周囲の皮膚や胸壁に再発し、ほかの臓器に転移がなく切除が可能であれば、手術で再発腫瘍とその周辺を取り除きます。放射線療法を受けたことがなければ、術後に放射線治療も行います。

局所再発でも、手術から再発までの期間が短く(一般的には2年以内)、炎症性乳がんのように皮膚や胸壁全体が赤みを帯びている場合には、先に抗がん剤治療、ホルモン療法分子標的薬治療といった薬物療法を行い、効果があれば手術や放射線療法を行います。

遠隔転移では薬物療法を

肺、肝臓、骨など乳房から離れた部分への遠隔転移の場合には、すでに全身にがん細胞が広がっているので、手術などで取り除くのは難しい状態です。薬による全身療法を行ってがんの進行を抑え、症状を和らげながら、できるだけ長くがんと共存することを目指します。

薬物療法は、ホルモン感受性、HER2タンパク発現の有無といったがん細胞の性質、患者さんの体の状況(閉経の状況、臓器機能)、本人の希望によって選択します。乳がんの薬には、アンスラサイクリン系薬剤、タキサン系薬剤に加え、植物由来の薬剤であるビノレルビン、代謝拮抗剤のゲムシタビン、カペシタビンなどがあり、一つの薬が効かなくなったら、別の薬剤の投与を検討します。

HER2陽性乳がんの人は、タキサン系薬剤に分子標的薬を併用した薬物療法が行われます。トラスツズマブ、ペルツズマブ、T-DM1、ラパチニブなどの抗HER2薬を単独、あるいは組み合わせて治療を継続します。

ホルモン感受性ありの人は再発・転移した場合でも、抗エストロゲン薬とLH-RHアゴニスト製剤、アロマターゼ阻害薬を単独、あるいは組み合わせて、ホルモン療法を継続するのが基本です。ホルモン感受性あり、HER2陽性の人は、ホルモン療法単独のほか、抗HER2薬とホルモン療法、あるいはホルモン薬、抗がん剤と抗HER2薬を併用する場合もあります。

骨転移の場合には、乳がんの薬物療法のほかに、骨転移治療薬のゾレドロン酸やデノスマブを投与し、場合によっては放射線療法や整形外科的な手術を行います。脳転移では主に放射線療法が行われ、病巣が1個でほかの臓器に転移がない場合には手術を考慮します。

薬物療法の進歩により、再発・転移しても仕事、家事、育児など、これまで通りの生活を長期間続けられる人が増えています。

再発・転移を告知されたときには、強いショックを受けるかもしれません。担当医とよく相談し納得して再発治療を受け、自分らしく生きることが大切です。

本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが2018年10月に出版した「もっと知ってほしい 乳がんのこと」より抜粋・転記しております。

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