頭頸部がんとは
頭頸部がんは、顔面から首(頸部)までの範囲にできるがんです。多くの種類があり、各々の発生原因や治療法、予後が異なります。頭頸部には呼吸、摂食、発声など重要な機能が集中しているため、生活の質(QOL)への影響が大きいのも特徴です。
生活の質に影響を及ぼす頭頸部がん
頭頸部とは顔面から首(頸部)までを指し、おおむね脳の下から鎖骨までの範囲で、耳、鼻、副鼻腔、のど(咽頭、喉頭)、口腔(舌など)、甲状腺、耳下腺などが含まれます。頭頸部には、顔面の形態を維持する、表情をつくるという整容的な機能、呼吸や食事(咀嚼/そしゃく・嚥下/えんげ)、発声、味覚、嗅覚、聴覚のような、生命維持や社会生活に重要な機能が集中しています。
そのため、頭頸部がんでは、がんのできる場所によっては、腫れや痛み、出血がある、飲み込みにくい、声がかすれる・出にくいなど、日常生活に支障を来すさまざまな症状が現れ、生活の質(QOL)が大きく低下することが問題になります。
発生頻度は低いが、重複がんもある
主な頭頸部がんとしては、咽頭がん(上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん)、喉頭がん(声門がん、声門上がん、声門下がん)、上顎洞がん、口腔がん(舌がんなど)、唾液腺がん、甲状腺がんなどがあります。頭頸部がんの発生頻度は、すべての種類を合わせても、胃がんや大腸がん、肺がんなどに比べると低く、日本人の罹患数は年間1万5000〜2万例です。
ただ、近年、咽頭がん、口腔がんの罹患率は、男女とも約2倍に増加しているといわれています。また、頭頸部がん(特に中咽頭がん、下咽頭がん)では、転移ではなく、食道などまったく別の部位にがんが発生しやすいことが知られています(重複がん)。
がんの種類によって特徴が異なる
各々のがんは、発生要因や治療法、予後などが異なります。頭頸部がんの多くは中高年の男性に発症しますが、がんの種類によっては若年者や女性にも発症します。例えば、舌がんは20~30歳代でも発症することがあり、一部の下咽頭がんは鉄欠乏性貧血の女性に多く発生します。
頭頸部がんの発生には喫煙や飲酒が大きく関わっています。最近、中咽頭がんではヒトパピローマウイルス(HPV)の関与が指摘されており、50%を占めるという報告もあります。
舌がんでは歯並びが悪い、入れ歯が合っていないなどの理由で、歯や入れ歯が常に舌にあたることによる機械的な刺激や虫歯、口腔内の不衛生が発生要因の1つと考えられています。なお、ここでは、頭頸部がんの中でも比較的頻度の高い中咽頭がん、下咽頭がん、喉頭がん、舌がんを中心に解説します。
本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが2015年5月に出版した「もっと知ってほしい 頭頚部がんのこと」より抜粋・転記しております。