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肺がん疑い~肺がん確定診断
肺がんは、胸部X線、喀痰細胞診、胸部CTによる検査に加え、気管支鏡によりがんが疑われる場所から採取した組織や細胞を顕微鏡で観察し、確定診断します。
肺がんの検診
がん検診の目的は、「①がんを早期発見し」「②適切な治療を行い」「③がんによる死亡を減らすこと(死亡率低下)」です。検診のメリットがデメリットを総合的に上回る科学的根拠がある場合に、がん検診が行われるよう定められています。
さまざまなメディアでは早期発見にのみフォーカスした報道が目立ちますが、「早期発見=死亡率低下」とはならないことに注意が必要です。早期発見が必ずしも良いとは言い切れないケースがありますし、検査自体が放射線被爆といったリスクがあるものや、がんでないのにがんと誤診されてしまう疑陽性というデメリットもあります。
肺がん検診 40歳以上で毎年受けること
肺がん検診は「男女ともに40歳を過ぎたら毎年受けること」と科学的根拠に基づき厚生労働省が定めています。初期の肺がんは自覚症状がほとんど認めらません。該当される方は無症状でも必ず肺がん検視を受けることが推奨されています。
肺がん検診の内容
検診内容は、胸部X線検査(レントゲン検査)を行います。
それに加え、ヘビースモーカーの方など肺がんになるリスクの高い人は喀痰細胞診を行います。喀痰細胞診は、痰にがん細胞が混じっているかどうかを顕微鏡で観察する方法で、喫煙と関係性がある小細胞肺がんや肺扁平上皮がんといった肺中心部の気管支に発生するようながん細胞を見つけることがあります。
喀痰細胞診の検査対象となるヘビースモーカーの方とは、「喫煙指数(ブリンクマン指数)が600以上の人」と定められています。喫煙指数は一日の喫煙本数と、これまでの喫煙年数を掛け算したものとなります。例えば、20歳から50歳までの30年間一日20本喫煙されていた方は「20(1日に吸うたばこの数)×30年間=600」となり、喀痰細胞診の対象になります。なお、現在たばこを吸っている人だけでなく、過去にたばこを吸っていた人も喫煙指数が600を超えた場合には対象となります。
検診費用は、自治体による住民健診、職場での健康診断や人間ドックなどによって、自己負担額は異なりますが、自治体の場合は、無料~1000円前後となります。
肺がん検診で精密検査が必要となる方は、1000人に20人程度。そのなかで、精密検査でがんが見つかる方は1人ほどではありますが、検診で精密検査が必要といわれた場合は、必ず医療機関を受診してください。
肺がんの検査の種類
肺がんと胸部X線検査(レントゲン)
胸部X線検査は、肺がんの早期発見にもっとも簡便かつ有効な手法です。肺がんの他にも、肺炎や気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった呼吸器疾患や心肥大や胸部大静脈瘤のような循環器疾患といった胸部疾患の診断のために行われる基本的な検査でもあります。
胸部X線の肺がん検出感度は60~80%ほどと報告されており、胸部X線で異常がある場合はCTにて詳しく検査することになります。
その他、肺がんにおけるX線検査は、手術後の経過観察や薬物療法中の肺臓炎などの副作用の発見を目的するなど、多くの目的で使用されます。
なお、X線は放射線の一種ですが、通常の検査で浴びる線量はごく少量であり、人体に影響を及ぼすことはほんどありません。
肺がんと喀痰細胞診(かったんさいぼうしん)
喀痰細胞診は、痰にがん細胞が混じっているかどうかを顕微鏡で観察する方法で、身体への負担がなく、簡便に行える検査です。特に喫煙と関係性がある小細胞肺がんや肺扁平上皮がんといった肺中心部の気管支に発生するようながん細胞を見つけることがあります。よって、胸部X線検査や胸部CT検査で異常を検知する前に喀痰細胞診で肺がんが見つけることもあります。
現在、肺がん検診対象者の中で喫煙指数600以上のヘビースモーカーといった肺がんになるリスクの高い人はX線検査に加えて喀痰細胞診を行います。
検出感度(肺がんを見つける確率)は40%に過ぎませんが、胸部X線検査で異常が認められず喀痰細胞診でのみ肺がんが見つかった方の長期生存の割合が高いことも報告されています。
また、肺がんハイリスク群(50歳以上で喫煙指数が600以上)の方に、胸部X線検査に喀痰細胞診を追加することで、早期がんの割合、切除率、5年生存率が上昇することが示されています。(一方、死亡率は12%低下させる傾向があることのみ示されており、統計学には差があるとされていません)
肺癌診療ガイドライン2019年版では、ハイリスク群の検出のために喀痰細胞診検査を行うことは「エビデンスの強さはC(弱い)」であるものの「総合的評価では行うよう強く推奨する」とされています。
肺がんの腫瘍マーカー検査
腫瘍マーカーとは、腫瘍細胞が産生している物質のことです。腫瘍マーカーを検出することにより、がんの存在、種類、進行度などを反映する「目印」になるもので、血液検査や組織検査などで検出します。なお、広義には腫瘍細胞が産生しなくとも、がんの目印になるものもあり、これらも腫瘍マーカーと呼ぶことがあります。
一般的によく耳にする腫瘍マーカーは、「血液検査で測定できるもの」を指していることが多いです。
肺がんでは、以下を腫瘍マーカーとして用います。
■非小細胞肺がん
CYFRA21-1、CEA(扁平上皮がん)、SLX(腺がん)、CA125、SCC、TPA
■小細胞肺がん
NSE、ProGRP
腫瘍マーカーは、偽陰性(検出されなくても肺がんだった)や疑陽性(検出されても肺がんではなかった)になることがあるため、腫瘍マーカーのみでは肺がんを疑う(または疑わない)ことは難しいです。肺癌診療ガイドライン2019年版では「検出目的に腫瘍マーカーは行わないこと」を提案しており「エビデンスの強さはD(とても弱い)」とされています。
それゆえ、肺がん検出目的ではなく、「目印」として肺がんの病期予想の補助、治療効果の判定補助、再発診断の補助として用いることが多いです。
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