悪性リンパ腫とは
悪性リンパ腫は血液のがんの一種で、細菌やウイルスから体を守る働きをしているリンパ系組織とリンパ外組織(節外臓器)に発生するがんです。がん細胞の形や性質から、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大きく分けられます。悪性リンパ腫は血液がんの中で最も患者数の多いがんです。体を細菌やウイルスから守る働きをしている血液中のリンパ球ががん化して、リンパ系組織やリンパ外組織(節外臓器)でリンパ腫と呼ばれるかたまりをつくります。
リンパ系組織とは、リンパ節とそれをつなぐリンパ管やリンパ液、胸腺、脾臓、扁桃腺のことです。リンパ系組織は全身に網の目のように張り巡らされて体を守っています。したがって、悪性リンパ腫はすべての部位に出現するおそれがあります。また、目、肺、胃、腸などのリンパ外組織にかたまりができるタイプもあります。
日本で悪性リンパ腫になる人は年間1万人に1人くらいで、患者数は年々増加しています。小児から高齢者まで年齢を問わず発症し、20代、30代の若い世代でもなる人が多いのが特徴です。性別では若干男性が多くなっています。一般的な症状は、首やわきの下、足のつけ根などリンパ節の多いところに腫れ、痛みのないしこりが現れます。原因不明の発熱が続いたり、急に体重が減少したり、ひどい寝汗といった症状が出る場合もあります。
原因は多くの場合不明ですが、一部の悪性リンパ腫にはウイルス感染症が関係していること、病気などで免疫不全になった人が発症するケースが多いことがわかっています。
悪性リンパ腫は、腫瘍細胞の形や性質から、ホジキンリンパ種とそれ以外の非ホジキンリンパ腫の2つに大きく分けられます。日本人の場合は、ホジキンリンパ腫が約10%、非ホジキンリンパ腫が約90%で、非ホジキンリンパ腫が圧倒的に多くなっています。細かく分けると30種類以上のタイプ(病型)に分けられるのも悪性リンパ腫の特徴の1つです。同じ悪性リンパ腫でも、そのタイプによって進行の仕方や治療法が異なります。
悪性リンパ腫の検査
悪性リンパ腫かどうか、またどのような種類のリンパ腫なのかを診断するためには、生検を行ってリンパ節や腫瘍の組織の一部を採取し、顕微鏡で調べる病理診断が必須です。また、リンパ腫の広がりや全身状態をみる検査も行います。
リンパ節に腫れやしこりがある、あるいは健康診断で悪性リンパ腫の疑いがあるとされたときには、まずは局所麻酔か全身麻酔をしてリンパ節やしこりの一部を手術で採取し(生検)、その組織を顕微鏡で詳しくみる病理検査で確定診断を行います。確定診断には生検が必須です。病理検査の際には、場合によっては染色体や遺伝子の検査を行い、悪性リンパ腫のタイプも診断します。
その結果、悪性リンパ腫だとわかったときには、胸部レントゲン検査、全身CT(コンピュータ断層撮影)検査、PET(陽電子放射断層撮影)検査、胃の内視鏡検査などを行い、がんの広がりを調べます。
リンパ腫が骨髄中に広がっていないかをみるためには、腸骨に針を刺して骨髄液を採取し、骨髄中の細胞や組織を調べる骨髄穿刺(生検)も重要です。必要に応じて、大腸内視鏡検査、MRI検査などを行う場合があります。また、病気の勢いや全身状態を調べるためには、血液検査や尿検査を行います。
血液検査では、白血球・赤血球・血小板の数、肝機能や腎機能などを調べます。血液検査でわかる血清LDH(酵素の一種)の値は、体内のリンパ腫細胞の量をみる重要な指標です。肝炎ウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルスⅠ型(HTLV-1)などが診断や治療方針に重要になることもあるので、感染の有無も調べます。
悪性リンパ腫は全身に広がっているおそれがあり、治療方針を決めるためには、このように複数の検査によってリンパ腫の広がりや全身状態を知ることが重要です。
本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが出版する「もっと知ってほしい悪性リンパ腫のこと」より抜粋・転記しております。