多発性骨髄腫による症状(合併症)を改善する治療について
骨病変、高カルシウム血症、貧血、腎不全、感染症、神経障害などの合併症の症状は、骨髄腫に対する薬物療法で軽減する場合もありますが、合併症そのものを対象とした治療を行うことも重要です。
多発性骨髄腫の合併症の中には、緊急対応が必要なものと、骨髄腫の治療と並行して治療するものとがあります。
骨病変
大部分の多発性骨髄腫は診断時点で骨破壊によって頭蓋骨や脊椎などの骨がもろくなっており、初診時で約5割の人に骨の痛みがみられます。こうした骨病変がある人は、ビスフォスフォネート製剤ゾレドロン酸の点滴投与やデノスマブの皮下注射を行うと、骨髄腫による骨の破壊が抑えられます。
腎障害のある人は、ゾレドロン酸の減量投与やデノスマブを選択します。どちらの薬も歯肉の感染や抜歯などの傷が治らなくなる顎骨壊死を起こしやすいので、事前に歯科医のチェックを受け、口腔ケアを行うことが重要です。デノスマブはけいれんや不整脈を引き起こすこともある重い低カルシウム血症の副作用が出やすいので、予防のためにビタミンD、カルシウム剤を併用します。
骨折しているときや骨がもろくなっている場合に、患部の骨を補強する手術が必要なこともあります。脊椎の圧迫骨折がある場合は、コルセットを着けると骨折の進行を抑えられ、痛みが軽減します。骨の痛みの治療には放射線照射も有効です。非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)は腎障害を起こしやすいので、漫然と使わないよう注意します。
また、中腰、重いものを持ち上げるなど骨に負担をかけないようにし、しりもちをつくようなことがないよう注意します。ただし、過度の安静は筋力低下や骨がもろくなるもとです。担当医に相談し、散歩など無理のない運動を続けましょう。
高カルシウム血症
高カルシウム血症は、食欲の低下や脱水症状を引き起こし、腎不全や意識障害につながる恐れがあり、迅速な対応が必要です。生理食塩水を点滴し脱水症状を改善させるほか、心臓への負担を減らし尿へのカルシウム排泄を促すため、利尿薬も投与します。
また、高カルシウム血症の治療には、骨病変の治療と同様にゾレドロン酸の点滴投与が有効で、腎障害のある人には、デノスマブの皮下注射を行います。
貧血
多発性骨髄腫の治療によって改善する場合が多いですが、貧血がひどいときは、赤血球の輸血を行います。腎機能の低下による貧血には、赤血球を増やすエリスロポエチン製剤を注射することもあります。
腎不全
ボルテゾミブを含む多剤併用の薬物療法で改善することが多いので、できるだけ早く多発性骨髄腫の治療を開始することが重要です。腎機能を回復させるためには、水分を多めに摂取するようにします。むくみがひどい場合には利尿薬を使うこともあります。
腎機能がかなり低下しているときには、一時的に人工透析を行います。人工透析は、腎臓の代わりに透析器で老廃物や余分な水分をろ過し、体の外へ排出する治療法です。
感染症
インフルエンザ流行期には、感染を予防するため、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの投与が推奨されます。ただ、多発性骨髄腫になるとワクチンによる抗体をつくる力が低下するので、健康な人に比べて効果が低い恐れがあります。造血幹細胞移植時やボルテゾミブを使うときには、帯状疱疹を発症しやすいため、抗ヘルペスウイルス薬のアシクロビルを予防的に服用します。
神経障害
脊髄圧迫による知覚障害や運動麻痺が起こったら、早急に放射線照射やステロイド薬による治療を開始します。
過粘稠度症候群
血液中にM蛋白が多くなると、血液がドロドロになり、めまい、頭痛、目が見えにくくなるといった症状が出る過粘稠度症候群になります。M蛋白の急速な除去が必要な場合、M蛋白を含む血けっしょう漿を除去し、健康な人の凍結血漿を入れる血漿交換を行います。
本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが2015年11月に出版した「もっと知ってほしい 多発性骨髄腫のこと」より抜粋・転記しております。