卵巣がんとは
一般に「卵巣がん」といわれるのは卵巣の表面を覆っている表層上皮に発生するがんで、初期の段階では症状がほとんどないのが特徴です。卵巣は、女性の骨盤内にある親指大ほどの大きさの臓器です。子宮の両側(左右)に一つずつあり、子宮体部の靱帯に支えられています。この卵巣には多種多様の腫瘍が発生します。
卵巣腫瘍は、腫瘍ができる場所によって、
①表層上皮性・間質性腫瘍
②性索間質性腫瘍
③胚細胞腫瘍
の3つに分類されます。
さらに腫瘍は
①良性
②境界悪性(良性と悪性の中間)
③悪性
に分けられます。
最も多く発生するのが表層上皮性・間質性腫瘍で、悪性の卵巣腫瘍のうち約90%がこのタイプです。一般に「卵巣がん」といえば、この悪性腫瘍のことをいいます。早くから「おなかが張る」「最近太った」という訴えがみられるものの、自覚症状がほとんどないため、早期発見しにくいがんです。
一方、卵巣がんは「組織型(そしきけい)」(がん細胞組織のタイプ)によっても分類されます。大半は腺がんといわれるタイプで、漿液性腺がん、類内膜腺がん、粘液性腺がん、明細胞腺がんの4種類に分けられます。同じ卵巣がんでも組織型により抗がん剤などの効き方が違ってきます。そのため、治療を進めるうえで自分のがんがどの組織型なのかを知ることは重要です。
卵巣がんの検査と診断
卵巣がんは、良性腫瘍との鑑別が難しいため、開腹手術を行っておなかの中を詳しく観察し、摘出した腫瘍を顕微鏡で調べる病理検査したうえで診断が確定されます。一般に卵巣がんが疑われるのは、卵巣に腫瘍がある場合です。がんの可能性を確認するために、医師による診察では腟から指を入れて子宮や卵巣、腟の状態を調べる「内診」や肛門から指を入れて直腸やその周囲の子宮、卵巣などの状態を調べる「直腸診」が行われます。
また、腫瘍マーカーを調べる血液検査も行われます。この検査は、体のどこかにがんが潜んでいると、ある特定のタンパク質(腫瘍マーカー)が増えるため(卵巣がんはCA125)、それを測定し、がんを見つけるというものです。しかし、腫瘍マーカーの数値だけで卵巣がんであることを確実に診断することはできません。このほか超音波エコー検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査などの画像診断を行い、卵巣腫瘍の状態、周囲の臓器への広がり方や転移の有無なども調べます。
卵巣腫瘍は多種多様で、しかも骨盤内の深いところにあるため、診察や検査だけでは、がんの診断および周囲の臓器への広がり方などを正確に判断することはできません。多くの場合は、開腹手術を行っておなかの状態を詳しく観察し、摘出した腫瘍の病理検査(永久標本病理検査)を実施して、卵巣がんの進行期と組織型が初めて確定されます。
本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが2014年11月に出版した「もっと知ってほしい 卵巣がんのこと」より抜粋・転記しております。