膵臓(すいぞう)がんとは
すい臓がんは、食べ物の消化と血糖値の調節に大きな役割を果たしているすい臓に発生するがんです。消化を助ける膵液が通る管の細胞に発生する膵管がんがほとんどですが、神経内分泌腫瘍(神経内分泌がん)も2~3%発生します。
すい臓は、みぞおちの少し下、胃の後ろ側にあり、洋ナシのような形をした長さ15~18cm、横幅3~5cm、厚さ2~3cm程度の臓器です。
すい臓は、①炭水化物、脂肪やたんぱく質を分解する消化酵素を含む膵液(すいえき)を分泌する(外分泌)、②血糖値を調節するインスリン、グルカゴンなどのホルモンを産出する(内分泌)といった2つの重要な役割を担っています。
わが国では年間約3万人の人がすい臓がんになり、年々患者数が増加しています。50~70歳代に多く、性別にかかわらず発症しますが、やや男性に多い傾向があります。
膵管がん
すい臓がんの約90%は、すい臓の中を茎のように通っている膵管(すいかん)の上皮(膵管細胞/すいかんさいぼう)から発生する膵管がんです。すい臓の腺房細胞(せんぼうさいぼう)から分泌された膵液は膵管を通って、胆管と合流し十二指腸に流れ込みます。成人の膵管は直径1mm程度ですが、がんになると膵管の拡張がみられます。
すい臓は、十二指腸に隣接した右側部分の膵頭部(すいとうぶ)、少し細くなった左側部分の膵尾部(すいびぶ)、その間の膵体部(すいたいぶ)の3つに分けられます。
すい臓がんの4分の3は膵頭部に発生します。膵頭部には、脂肪の分解を助ける胆汁を肝臓から十二指腸へ送る胆管が通っています。膵管にできたがんが広がって胆管が狭くなると、眼球や皮膚が黄色くなる黄疸が発症しやすくなります。
すい臓は肝臓、十二指腸、胃といった消化器の最も深いところにあるため、がんがみつかりにくく、周囲のリンパ節や血管、隣接する臓器に転移しやすい特徴があります。膵管がんは初期の段階では症状がなく、腹痛、胃のあたりや背中が重苦しい、食欲不振、下痢気味、黄疸、糖尿病の悪化など、症状が出た段階でみつかることが多くなっています。
神経内分泌腫瘍(神経内分泌がん)
一方、すい臓の中には、血糖値を調整するホルモンを分泌する細胞のかたまりである「ランゲルハンス島」が点在しています。すい臓がんの2~3%は、そこに発生する神経内分泌腫瘍(神経内分泌がん)で、小児から高齢者まであらゆる年代に発生するのが特徴です。
神経内分泌腫瘍は、悪性度の低い神経内分泌腫瘍と悪性度が高く進行の早い神経内分泌がんの2つに分けられます。悪性度の低い神経内分泌腫瘍は、膵管がんに比べて進行が遅く治りやすいがんです。
神経内分泌腫瘍では、過剰にホルモンが産出される症状が出る場合があります。インスリンを過剰に産出するタイプのインスリノーマでは、低血糖になり意識がもうろうとすることがあります。胃酸が過剰に分泌されるタイプの神経内分泌腫瘍は専門的にはガストリノーマと呼びます。
神経内分泌腫瘍の場合は症状があるからといって必ずしも進行しているわけではなく、自覚症状が早期発見のきっかけになります。
本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが2017年10月に出版した「もっと知ってほしい膵臓がんのこと」より抜粋・転記しております。