5月20日、エーザイ株式会社が手術が不可能な「甲状腺がん」に対する新規分子標的薬 レンバチニブ(商品名:レンビマ)を日本にて発売しました。
レンバチニブは、がんの血管の形成や増殖に関わるVEGFR、FGFR、RET、KIT、PDGFRなどを標的が多い分子標的薬です。
がんは大きくなるためには酸素や栄養が必要です。そのため、酸素や栄養の通り道である血管を形成します。その血管を作るときに関わるのがVEGFRなどのタンパク質です。そのタンパク質の働きを抑えるのが、レンビマです。
甲状腺がんを対象とした国際共同第3相臨床試験において、プラセボ(偽薬)に対してレンビマの方ががんの増大を抑制する効果が認められています。なかでも分化型甲状腺がんの増大を抑える期間は18.3か月であり、プラセボに比べて1年強も長いというポテンシャルをみせています。本試験において認められた主な副作用は、高血圧、下痢、疲労・無力症、食欲減退、体重減少でした。
レンビマは、2015年2月に米国で販売を開始しており、2015年3月にヨーロッパでも承認されています。
また、肝細胞がんを対象とした第3相臨床試験や腎細胞がん、非小細胞肺がんなどを対象にした第1~2相臨床試験が進行中です。
<オンコロスタッフコメント>
エーザイ株式会社によると、日本の甲状腺がん患者数は、約13,000∼29,000人と推定されています。
手術が不可能な甲状腺がんに対する治療選択肢は限られており、新たな治療法の開発が望まれていました。特に、甲状腺未分化がんは、悪性度が高い疾患です。
ただし、月の薬価は約68万円となり、高額な薬剤です。
一方、見込投与数が発売6年度目のピーク時でも400人程度であり、製薬会社からすれば致し方ない決断であるとも考えます。
なお、レンバチニブ(レンビマ)は、エーザイ株式会社の自社開発品となります。実をいうと、現在使用されている分子標的薬を含む抗がん剤のうち、日本オリジンのものは少ないです。特定分子は日本人が見つけても薬剤開発は海外主導である事も多く、こういった日本オリジンの薬剤が発売されるのは少しうれしく思います。(カチ)