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CheckMate-214試験 -免疫チェックポイント阻害薬の可能性-
2017年8月15日、小野薬品工業株式会社とブリストル・マイヤーズ スクイブ社は中リスクまたは高リスクの未治療の進行または転移性腎細胞がん患者を対象に、スニチニブ(商品名:スーテント)に対する免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)併用療法の有効性を検証した第III試験(CheckMate-214; NCT02231749)の結果を自社プレスリリースで公表した。
公表された結果は、本試験の3つある主要評価項目の内の2つにあたる客観的奏効率(ORR)と無増悪生存期間(PFS)である。
1つ目の主要評価項目である客観的奏効率(ORR)として、スニチニブ投与群26.5%に対して、ニボルマブとイピリムマブ併用療法群は41.6%と主要評価項目を達成した。
一方、2つ目の主要評価項目である病勢進行または死亡のリスク(無増悪生存期間:PFS)はニボルマブとイピリムマブ併用療法群で18%(ハザード比0.82、95%信頼区間:0.64-1.05、p=0.03)減少するも、スニチニブ投与群に対する統計学的な有意差を示せなかった。
なお、無増悪生存期間(PFS)の中央値はスニチニブ投与群では、8.38ヶ月(95%信頼区間:7.03-10.81)に対して、ニボルマブとイピリムマブ併用療法群では11.56ヶ月(95%信頼区間:8.71-15.51)であった。
二つの相反する主要評価項目の考察
以上のように、本試験では3つある主要評価項目の内の2つで相反する結果となった。
無増悪生存期間(PFS)の結果は、主要評価項目を達成しなかったものの、対照群に比べて良好な成績を出しているために解釈には困る。
しかし、スニチニブ単剤療法に対して免疫チェックポイント阻害薬の併用療法で統計学的有意差が示せなかったことは、免疫チェックポイント阻害薬が未治療の進行性腎細胞がんの新しい標準治療にとって代わる可能性から遠のいたと言わざるを得ないと考える。
なぜなら、本試験結果を公表した翌日の2017年8月16日、米国Exelixis社が進行性腎細胞がんの新薬であるカボザンチニブ(米国での商品名:CABOMETYX)の効能を”未治療の進行性腎細胞がん”へと変更する医薬品承認事項変更申請(sNDA)を米国食品医薬品局(FDA)へ提出したためである。
Exelixis社がカボザンチニブの医薬品承認事項変更申請(sNDA)を提出した科学的根拠は、中リスクまたは高リスクの未治療の進行性腎細胞癌患者に対してカボザンチニブ単剤またはスニチニブ単剤を投与し、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を比較検証する第II相試験(CABOSUN試験)の結果に基づいている。
本試験の試験デザインはCheckMate-214試験(NCT02231749)と酷似しているが、その主要評価項目である病勢進行または死亡のリスク(無増悪生存期間:PFS)はカボザンチニブ単剤群により34%(ハザード比0.66、95%信頼区間:0.46-0.95、p=.012)減少することが確認されている。
もちろん、両試験は試験デザインが酷似するも患者背景は異なり、試験フェーズもカボザンチニブ単剤療法が第II相であるのに対して、ニボルマブとイピリムマブ併用療法は第III相であるために単純に比較はできない。
しかし、カボザンチニブ単剤でも、現在の未治療進行性腎細胞がんの標準治療薬であるスニチニブを対照に、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法に同等の有効性を示していることは、免疫チェックポイント阻害薬が未治療の進行性腎細胞がんの新しい標準治療にとって代わる可能性が現時点では低いと筆者は考える。
最終的な結論は、CheckMate-214試験(NCT02231749)の3つ目の主要評価項目である全生存期間(OS)の結果を待って出したい。
記事:山田 創
編集:下川床 和真
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