2018年1月18日より20日までアメリカ合衆国・カルフォルニア州・サンフランシスコで開催されている消化器癌シンポジウム(ASCO-GI2018)の学会誌にて、大腸がん患者に対するアスピリンベネフィットはPD-L1発現状態で決まるかどうかを検証した試験の結果がBrigham and Women’s Hospital・荻野周史氏らにより公表された。
本試験は、Nurses’ Health StudyおよびHealth Professionals Follow-Up Studyにより大腸がんと診断されている患者(N=617)データを参照し、CD274(PD-L1)発現レベルの違いにより大腸がん患者に対するアスピリン投与により生存ベネフィットに差が出るかどうかを検証している。
本試験の結果、大腸がんと診断された後にアスピリンを服用することで得られるベネフィットはCD274(PD-L1)発現レベルの違いにより異なることが示された。アスピリンを定期的に服用するCD274(PD-L1)発現レベルの低い患者における大腸がん特異的生存率は0.16(95%信頼区間:0.06-0.41)であるのに対して、CD274(PD-L1)発現レベルの高い患者における大腸がん特異的生存率は1.01(95%信頼区間:0.61-1.67)を示した。
このような生存率の差は、CD274(PD-L1)発現レベル以外の背景因子であるマイクロサテライト安定、PIK3CA野生型、PTGS2発現、CDX2発現、腫瘍浸潤リンパ球などの各サブグループ解析でも同様の結果が得られている。
本試験の結果より、荻野周史氏らは以下のような結論を述べている。”大腸がん患者におけるアスピリンの服用はCD274(PD-L1)発現レベルの違いによりその生存率が異なり、CD274(PD-L1)発現レベルの低い患者ではアスピリン服用によるベネフィットがあります。”
なお、本試験はがん細胞自体がプロスタグランジン(PG)E2という生理活性脂質を産生することで免疫反応を逃れるメカニズムになるという仮説に基き実施されている。そのため、本試験の結果よりプロスタグランジン(PG)E2の生合成阻害をするアスピリンの効果は、抗PD-1/PD-L1抗体薬の抗腫瘍効果を増強する可能性についても示唆された。
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