・腎機能障害のある多発性骨髄腫患者を対象にレブラミドの安全性、有効性を検証した試験
・腎機能障害別に割り付けをし、レブラミドの最大耐用量を調べた
・通常容量の投与、透析患者であっても投与量を減らせば連日投与の可能性が示された
2018年8月29日、医学誌『Blood Cancer Journal』にて腎機能障害のある再発難治性多発性骨髄腫患者に対する免疫調節薬(IMids)であるレナリドミド(商品名レブラミド;以下レブラミド)+デキサメタゾン併用療法の安全性、有効性を検証した第I/II相の試験のPrE1003/a PrECOG試験の結果がMayo Clinic・Joseph Mikhael氏らにより公表された。
PrE1003/a PrECOG試験とは、腎機能障害のある再発難治性多発性骨髄腫患者(N=63人)をクレアチニンクリアランス(Ccr)別に30–60ml/分(グループA:N=29人)、30ml未満/分・非透析患者(グループB:N=19人)、30ml未満/分・透析患者(グループC:N=14人)の3群に分け、28日を1サイクルとして1日目から21日目まで1日1回レブラミド10mg~25mg+1日目、8日目、15日目、22日目にデキサメタゾン40mg併用療法を投与し、主要評価項目として第I相段階では安全性、第II相段階では部分奏効(PR)以上(55%以上を良好、40%以下を不十分として定義)を達成した患者割合などを検証した第I/II相試験である。
なお、本試験の各群におけるレブラミドの投与量・投与間隔は下記の通りである。グループA群で1日目から21日目まで1日1回レブラミド10mg(レベル1)、1日目から21日目まで1日1回レブラミド15mg(レベル2)、1日目から21日目まで1日1回レブラミド25mg(レベル3)。
グループB群で1日目から21日目までレブラミド15mg隔日投与(レベル1)、1日目から21日目までレブラミド25mg隔日投与(レベル2)、1日目から21日目まで1日1回レブラミド15mg(レベル2)、1日目から21日目まで1日1回レブラミド25mg(レベル4)。
グループC群で1日目から21日目まで週3回レブラミド15mg(レベル1)、1日目から21日目まで1日1回レブラミド10mg(レベル2)、1日目から21日目まで1日1回レブラミド15mg(レベル3)、1日目から21日目まで1日1回レブラミド25mg(レベル4)
本試験が実施された背景としてレブラミドは多発性骨髄腫のキードラッグであるが、腎排泄され、腎機能障害のある多発性骨髄腫患者において排尿障害、腎不全、血尿、急性腎不全などの副作用が発現する懸念がある。また、腎機能障害別のレブラミドの最大耐用量(MTD)についてはデータが不十分であり、レブラミドの最適投与量・投与間隔を明らかにすることは臨床上重要な課題であるため、本試験が実施された。
本試験の結果は下記の通りである。第I相段階における主要評価項目である安全性は、用量制限毒性(DLT)を発現した患者は1人も確認されなかった。なお、第I相段階では全群で1日1回レブラミド25mgの投与量・投与間隔まで増量できたが、増量したグループB群、C群の中には減量を実施した患者もいた。
また、第II相段階における主要評価項目である全奏効率(ORR)はグループA群で60.0%(90%信頼区間:39.4–78.3%,N=12/20人)、グループB群で60.0%(90%信頼区間:30.4–85.0%,N=6/10人)、グループC群で20.0%(90%信頼区間:1.0–65.7%,N=1/5人)、全群で54.3%(90%信頼区間:39.2–68.8%,N=19/35人)であった。
なお、投与量(レブラミド≥15mg 対 <15mg)、投与間隔(1日1回レブラミド 対 2日1回レブラミドなど)別での全奏効率(ORR)において統計学的有意な差は確認されなかった。そして、レブラミドの投与量・投与間隔はグループA群では28日を1サイクルとして1日目から21日目まで1日1回レブラミド25mg、グループB群、C群では少なくとも28日を1サイクルとして1日目から21日目まで1日1回レブラミド15mgの投与量・投与間隔で問題なかった。
また、病勢進行または死亡に関わる43件のイベントが発生した時点における無増悪生存期間(PFS)中央値は12.6ヶ月(90%信頼区間:10.5-21.8ヶ月)、死亡に関わる37件のイベントが発生した時点における全生存期間(OS)中央値は20.0ヶ月(90%信頼区間:12.5–42.1ヶ月)であった。
以上のPrE1003/a PrECOG試験の結果よりJoseph Mikhael氏らは以下のように結論を述べている。”本試験により、腎機能障害のある多発性骨髄腫患者に対しても通常用量であるレブラミド25mg/日の投与は可能であり、透析患者においても少なくともレブラミド15mg/日の連日投与が可能であることが示唆されました。そして、本試験の結果より週3回のようなレブラミドの複雑な投与スケジュールを簡便化できる可能性があります。”
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