・アルコール摂取量と致死的前立腺がんの発症率、非転移性前立腺がんの転移率や死亡率の関係性を検証
・アルコールを摂取する人は摂取しない人に比べ、致死的前立腺がんを発症するリスクが16%低率
・適度な赤ワインを摂取することで致死的前立腺がんへ病勢進行するリスクが50%低率だった
2019年4月26日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてアルコール摂取量と致死的前立腺がんの発症率、非転移性前立腺がんの転移率、死亡率の関係性について検証した前向きコート試験であるHealth Professionals Follow-Up試験の結果がHarvard T.H. Chan School of Public HealthのMary K. Downer氏らにより公表された。
Health Professionals Follow-Up試験とは、1986年~2012年の期間にて47,568人の非がん男性患者、5,182人の非転移性前立腺がん患者を対象にして総アルコール量、赤ワイン、白ワイン、ビール、リキュールの摂取量は、致死的前立腺がん発症率、非転移性前立腺がん転移率、死亡率に関係するかどうか検証した前向きコート試験である。
本試験が実施された背景として、致死的前立腺がんの発症率、非転移性前立腺がんの転移率、死亡率はアルコール摂取量の関係性について未だに明らかになっていないためである。以上の背景より、致死的前立腺がんと診断された患者、または非転移性前立腺がんに罹患し、転移または死亡した患者を対象にアルコールとの関係性が検証された。
本試験の結果、アルコールを摂取する人は摂取しない人に比べて総アルコール量に関係なく致死的前立腺がんを発症するリスクが16%低率(HR:0.84,95%信頼区間:0.71−0.99)であることが明らかになった。また、致死的前立腺がんへ病勢進行するリスクは総アルコール量では関係がない(HR:0.99,95%信頼区間:0.57−1.72)にも関わらず、適度な赤ワインを摂取することで致死的前立腺がんへ病勢進行するリスクが50%低率(HR:0.50,95%信頼区間:0.29−0.86,P=0.05)であることが明らかになった。
また、前立腺がんとして診断された後に1日15~30g程度のアルコールを摂取する人は摂取しない人に比べて死亡するリスクが29%低率(HR:0.71,95%信頼区間:0.50−1.00,P=0.05)。赤ワインにおいては、摂取する人は摂取しない人に比べて死亡するリスクが26%低率(HR:0.74,95%信頼区間:0.57−0.97,P=0.007)であることが明らかになった。
以上のHealth Professionals Follow-Up試験の結果よりMary K. Downer氏らは以下のように結論を述べている。”非がん患者はアルコールを摂取することで摂取しない人よりも致死的前立腺がんを発症するリスクが低いことが本試験より明らかになりました。また、非転移性前立腺がんは赤ワインを摂取することで摂取しない人よりも致死的前立腺がんへ病勢進行するリスクが低いことも明らかになりました。本結果は今後もさらなる研究をする必要がありますが、前立腺がん患者は適量のアルコールを摂取しても問題ありません。”
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