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がん治療薬の有益性を裏付けるための全生存期間以外の評価項目についてJAMA Oncology誌より

  • [公開日]2019.07.18
  • [最終更新日]2019.07.18

がん治療薬が規制当局の承認を取得する際の根拠データとして、例えば全生存期間OS)という典型的な評価項目は、当然ながら万全ではない。実際、過半数はOSベネフィットも、生活の質QOL)に反映される患者の主観的評価(PRO:patient-reported outcomes)でのベネフィットも証明されていなかった。

患者にとって真に有益ながん治療を提供するために開発や審査の過程で必要なことは何か、米国Aptitude HealthのChadi Nabhan氏らの研究グループが探った。研究成果は、2019年7月3日のJAMA Oncology誌オンライン版で報告された。

目次

7年間でFDA承認を取得した65剤を調査分析

様々なタイプのがん治療薬が実用化されている近年、その薬剤はどのような適応症(効能・効果)を対象として、どのような評価項目を根拠にどのような手続きを経て承認を取得したか、技術や評価手法の向上などを背景とした何等かの傾向はあるのか。

研究グループは、米国食品医薬品局(FDA)が毎年発行している「Novel Drug Summary」の2011年版から2017年版、データベース「Drugs@FDA」のほか、承認取得を支持する結果が得られた大規模臨床試験のデータなどを調査資料として分析した。

約4分の3の適応症ではOS以外の評価で承認

その結果、2011年から2017年の間に、FDAが承認したがん治療薬は、71の適応症に対し65剤であった。適応拡大での承認ではなく、1つ目の適応症を対象として承認された71適応症のうち、全生存期間(OS)のデータに基づき承認が決定されたのは15適応症(21%)、OS以外の代替評価項目のデータに基づき承認が決定されたのは54適応症(76%)であった。

なお、OS以外の代替評価項目とは、無増悪生存期間PFS)、奏効率(RR)の他、無事象での生存期間や浸潤病変がない状態での生存期間、血液がん関連の細胞遺伝学的寛解、血液学的寛解などであった。

OSベネフィットがない場合の代替評価項目

代替評価項目を根拠とした承認は、2011年から2017年の期間全体で76%を占め、2008年から2012年の期間(67%)と比べても増加していることから、OS以外の評価項目に基づく承認は、近年増加傾向にあると考えられた。

OSベネフィットに基づき承認された上記の15適応症において、OS延長時間は1.4カ月から11.8カ月の範囲で、中央値は1.7カ月であったことからも、研究グループは、OSを指標とする患者の利益には限界があると言わざるを得ないとしている。

OSベネフィットがない場合は、生活の質(QOL)向上へと審査の視点を移し、代替評価項目として患者の主観的評価項目(PRO)を指標に議論する道もあるが、実際には、PROの統計学的有意な改善が証明されたのは4分の1程度であった。

すなわち、50/71適応症(70%)では、大規模臨床試験の評価項目としてPROを採用しており、18/71適応症(25%)でPROベネフィットが統計学的に証明されていた。14剤は少なくとも1項目のPROで統計学的有意な改善効果が確認され、承認時点でPROベネフィットが明確であったのは14剤のうち1剤のみであったが、承認取得後になって、新たに4剤でPROベネフィットが証明された。

また、従来からのFDAの審査手続きにより承認された適応症の割合を調べると、OSに基づく場合は14/15適応症(93%)であったのに対し、代替評価項目に基づく場合は23/54適応症(43%)であった。つまり、代替評価項目に基づく承認の半数以上は、FDAの優先審査や迅速承認などのプロセスを経ていることになる。そうした制度で通常よりも速いスピードで承認された製品は、臨床的有益性を検証するため、市販後にも臨床試験を実施することが求められている。

承認取得後も視野に入れた制度で患者利益の最大化へ

承認取得後フォローアップ期間(中央値4.1年)で、OSの改善が認められたのは23適応症(32%)、OSの改善が認められなかったのは13適応症(18%)で、残り約半分の35適応症(49%)ではOSに対する効果が不明とされていた。

研究グループは、長い時間をかけてOSベネフィットを検証していく市販後臨床試験と、そうした試験を完了させる適切な時期を決めることなど、患者にとって有益ながん治療薬の厳選に向けた制度上の仕組み作りを再考する必要性を提唱している。

Surrogate End Points and Patient-Reported Outcomes for Novel Oncology Drugs Approved Between 2011 and 2017(JAMA Oncol.July 3,2019. doi:10.1001)

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