2019年7月3~6日までスペイン・バルセロナで開催されたthe ESMO World Congress on Gastrointestinal Cancer 2019(WCGC 2019)にて、αフェトプロテイン(AFP)高値の進行肝細胞がん(HCC)患者に対する抗VEGFR2モノクローナルIgG1抗体であるラムシルマブ(商品名サイラムザ;以下サイラムザ)単剤療法の有効性を検証した第3相のREACH試験(NCT01140347)、REACH-2試験(NCT02435433)における肝動脈化学塞栓療法(TACE)治療歴別の解析結果がUniversity College LondonのTim Meyer氏らにより公表された。
REACH試験、REACH-2試験とは、ソラフェニブ(商品名ネクサバール)治療歴のあるChild-Pugh A進行肝細胞がん患者に対して2週を1サイクルとしてサイラムザ8mg/kg単剤療法を投与する群、またはプラセボ単剤療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)などを比較検証したプラセボ比較二重盲検下の第3相試験である。なお、本学会にて公表された結果は、AFP値400ng/mL以上の患者を対象にして肝動脈化学塞栓療法(TACE)治療歴の有無にに分けて解析している。
解析対象になった肝動脈化学塞栓療法(TACE)治療歴のある患者群(N=302人)、ない患者(N=240人)の患者背景は両群間で大きな偏りはなく、下記の通りである。肝動脈化学塞栓療法(TACE)治療歴のある患者はサイラムザ群で56.6%(N=179人)、プラセボ群で54.4%(N=123人)。前治療歴中央値は両群間で1レジメンである。
以上の背景を有する本解析の結果は下記の通りである。肝動脈化学塞栓療法(TACE)治療歴のある患者群における主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はサイラムザ群8.2ヶ月に対してプラセボ群5.2ヶ月、サイラムザ群で死亡(OS)のリスクを31.3%(HR:0.687,95%信頼区間:0.530-0.890)減少した。同様に、。肝動脈化学塞栓療法(TACE)治療歴のない患者群における全生存期間(OS)中央値はサイラムザ群7.7ヶ月に対してプラセボ群5.0ヶ月、サイラムザ群で死亡(OS)のリスクを30.5%(HR:0.705,95%信頼区間:0.524-0.950)減少した。
副次評価項目である肝動脈化学塞栓療法(TACE)は治療歴のある患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はサイラムザ群2.8ヶ月に対してプラセボ群1.5ヶ月、サイラムザ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを44.3%(HR:0.557,95%信頼区間: 0.432-0.719)減少した。同様に、。肝動脈化学塞栓療法(TACE)治療歴のない患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はサイラムザ群2.8ヶ月に対してプラセボ群1.6ヶ月、サイラムザ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを41.7%(HR:0.583,95%信頼区間: 0.431-0.787)減少した。
なお、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)ともに肝動脈化学塞栓療法(TACE)治療歴なし、1レジメン、1レジメン以上、2レジメン以上の4群に分けてハザード比を解析しており、いずれの群においてもプラセボ群に比べてサイラムザ群で良好な傾向を示した。
以上のREACH試験、REACH-2試験における肝動脈化学塞栓療法(TACE)治療歴別の解析結果よりTim Meyer氏らは以下のように結論を述べている。”αフェトプロテイン(AFP)高値の進行肝細胞がん患者に対する抗VEGFR2モノクローナルIgG1抗体サイラムザは、肝動脈化学塞栓療法(TACE)治療歴の有無に関わらず全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)を改善しました。”
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