・治療歴のある再発/持続性低悪性度漿液性卵巣がん患者が対象の第3相試験
・メクトビ単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・無増悪生存期間は、メクトビ群9.1ヵ月に対して化学療法群10.6ヵ月と有意な延長を示せず
2020年8月21日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて治療歴のある再発または持続性低悪性度漿液性卵巣がん患者に対するMEK阻害薬であるメクトビ(一般名:ビニメチニブ、以下メクトビ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第3相のMILO/ENGOT-ov11試験(NCT01849874)の結果がUniversity of Arizona College of MedicineのBradley J. Monk氏らにより公表された。
MILO/ENGOT-ov11試験とは、治療歴のある再発または持続性低悪性度漿液性卵巣がん患者(N=303人)に対して1日2回メクトビ45mg単剤療法を投与する群、または主治医選択の化学療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)などを比較検証した第3相試験である。
低悪性度漿液性卵巣がんに対する化学療法の応答性は不良であり、その原因としてはKRAS、BRAFをはじめ遺伝子変異によるMAPK経路に対する影響が考えられている。以上の背景より、MEK阻害薬であるメクトビ単剤療法の本患者に対する有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、主要評価項目である独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)中央値はメクトビ単剤療法群9.1ヵ月(95%信頼区間:7.3-11.3ヵ月)に対して主治医選択の化学療法群10.6ヵ月(95%信頼区間:9.2-14.5ヵ月)、主治医選択の化学療法群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを21%増加(HR:1.21,95%信頼区間:0.79-1.86)した。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はメクトビ単剤療法群25.3ヵ月に対して主治医選択の化学療法群20.8ヵ月、客観的奏効率(ORR)はメクトビ単剤療法群16%に対して主治医選択の化学療法群13%、奏効持続期間(DOR)中央値はメクトビ単剤療法群8.1ヵ月に対して主治医選択の化学療法群6.7ヵ月を示した。
以上のMILO/ENGOT-ov11試験の結果よりBradley J. Monk氏らは「治療歴のある再発または持続性低悪性度漿液性卵巣がん患者に対するMEK阻害薬メクトビ単剤療法は、主治医選択の化学療法に比べて主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善することはできませんでした」と結論を述べている。
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