10月30日、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第二部は、審議事項として9製品の審議を行った。うち抗がん剤関連は3製品。また、報告事項※として6製品を報告し、いずれも抗がん剤関連であった。
※報告事項:医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階において、承認して差し支えないとされ、部会では審議せず報告のみでいいと判断されたもの。
目次
審議品目
カルケンスカプセル100mg(アカラブルチニブ)
効能・効果:再発または難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)
B細胞に発現するB細胞受容体(BCR)の下流シグナル伝達分子であるBTKと結合し、BTKのキナーゼ活性を阻害することでB細胞性腫瘍の増殖などを抑制するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬。2020年7月時点において、再発又は難治性の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)に関する効能・効果で、米国を含む15カ国で承認されている。
ビラフトビカプセル50mg、同75mg(エンコラフェニブ)
効能・効果:がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん
がん細胞の増殖に必要なBRAFタンパク質の活性を阻害し、がん細胞の増殖を抑えるBRAF阻害薬。抗ヒトEGFRモノクローナル抗体セツキシマブとの2剤併用、もしくはメクトビも含めた3剤併用療法が可能になった。
メクトビ錠15mg(ビニメチニブ)
効能・効果:がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん
がん細胞の増殖に必要なMEKタンパク質の活性を阻害し、がん細胞の増殖を抑えるMEK阻害薬。ビラフトビとセツキシマブとの3剤併用療法が可能になった。海外では20年7月時点で、BRAF遺伝子変異を有する結腸・直腸がんに対して、ビラフトビは32の国・地域で承認済。
報告品目
ゼローダ錠300(カペシタビン)
効能・効果:手術不能または再発乳がん、結腸・直腸がん
段階的にフルオロウラシル(5-FU)に変換されることで、骨髄や消化管では活性体になりにくく、全身の曝露を抑えるフルオロシチジン誘導体。高用量の5-FUを腫瘍選択的に供給することを目的として創製された。今回は下記の用法が追加となった。
- 手術不能または再発乳がんでラパチニブトシル酸塩水和物と併用する場合にC法を使用する
- 結腸・直腸がんでオキサリプラチンと併用する場合はC法を使用する
- 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がんには他の抗悪性腫瘍剤との併用でC法またはE法※を使用する
※E法は今回加わった用法
サイラムザ点滴静注液100mg、同500mg(ラムシルマブ)
効能・効果:治癒切除不能な進行・再発の胃がん、がん化学療法後に増悪した血清AFP値が400ng/mL以上の切除不能な肝細胞がん、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
ヒト型抗VEGFR-2(血管内皮増殖因子受容体2型)モノクローナル抗体。がん細胞の増殖に必要なVEGFというタンパク質の働きを選択的に抑え、がんの増殖を抑える。現在は60分かけて投与するが、初回投与時に忍容性が確認された場合、2回目以降は30分まで投与時間を短縮できる用法が追加された。また、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)では、EGFR-TKIであるエルロチニブまたはゲフェチニブと併用して使用する用法も追加となった。
海外では、投与時間を30分まで短縮できる用法は米国で、NSCLCに対するエルロチニブとの併用投与は米国とEUで承認済である。
オプジーボ点滴静注20mg、同100mg、同120mg、同240mg(ニボルマブ(遺伝子組換え))
効能・効果:切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
身体の免疫系を利用して抗腫瘍免疫応答を再活性化するPD-1免疫チェックポイント阻害薬。ヤーボイとの併用で非小細胞肺がんの一次治療に使用可能となった。
ヤーボイ点滴静注液50mg(イピリムマブ(遺伝子組換え))
効能・効果:切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CLTA-4)に結合する遺伝子組み換えヒトモノクローナル抗体。T細胞の活性化を抑制する調節因子であるCTLA-4と結合し、CTLA-4とそのリガンドであるCD80/CD86との相互作用を阻害する。オプジーボとの併用療法である。作用機序の異なる免疫療法薬の併用では初めて、非小細胞肺がんの1次治療の適応となった。
海外では、非小細胞肺がんに対する2剤併用療法は米国など2つの国・地域で承認済。
ダラザレックス点滴静注100mg、同400mg(ダラツムマブ(遺伝子組換え))
効能・効果:多発性骨髄腫
ヒト型抗CD38モノクローナル抗体。がん細胞に発現しているCD38に選択的に結合することでがん細胞の増殖を抑える。初回投与時に16mg/kgを投与していたが、今回、初回は1回8mg/kgを1日目と2日目に分割投与する用法を追加した。
カボメティクス錠20mg、同60mg(カボザンチニブリンゴ酸塩)
効能・効果:がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞がん
血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)に加えて、肝細胞増殖因子受容体(MET)、growth arrest-specific6(GAS6)受容体(AXL)を阻害するチロシンキナーゼ阻害薬。現在は根治切除不能または転移性の腎細胞がんで承認されている。肝細胞がんの適応は、海外では米国、EUを含む49の国・地域で承認済。
参照元:
厚生労働省 薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会)
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