6月8日、ファイザー株式会社は、第三世代ALK阻害薬ロルラチニブが、厚生労働省より優先審査の対象となることが通知されたと発表した。
ロルラチニブは、「ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能・効果で、本年1月に国内における製造販売承認を申請している。今回、ロルラチニブが優先審査の対象になったことは、昨年10月に導入された「医薬品の条件付き早期承認制度」に基づいている。
本制度は、重篤な疾患で有効な治療方法が乏しく、患者数が少ないこと等により検証的臨床試験の実施が困難、あるいは実施可能であっても相当の期間を要すると判断される場合に適用が検討される。また、適用されるためには検証的臨床試験以外の臨床試験等により一定の有効性、安全性を示す必要があり、市販後に必要な調査等を実施することが承認条件となる。
ロルラチニブは「医薬品の条件付き早期承認制度」が適用された初めての薬剤となり、本制度が適用された医薬品は優先審査の対象となり、優先審査品目の総審査期間(目標)は、9ヵ月となっている。
一方、今回、ALK陽性非小細胞肺がん患者である中原博文氏(故人)を中心に、早期承認署名活動を行い3,620名もの署名とともに「早期承認の要望書」を厚生労働大臣宛てに提出している。
(詳しくは、以下のリンク)
非小細胞肺がん ALK阻害剤ローラチニブ 分子標的薬の早期承認に向けて署名を!
今回、患者署名活動は素晴らしいことであるが、課題も残る。
医薬品の条件付き早期承認制度の適用に係る手順は、「①承認申請前に独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と相談し、②PMDA が本制度適用の該当性等について、申請者と合意し、評価報告書を作成、③申請者は、承認申請時に、当該新医薬品等の承認申請書の備考欄に「医薬品条件付き早期承認品目該当性相談を実施」と記載をした上で申請する」とあるからだ。
要するに、署名活動がなされ要望書が提出されても、申請者(今回のケースではファイザー社)が、上記手順を踏んだのちに承認申請を行っていないと、本制度による「優先審査対象」になり得ないからだ。
肺がん患者会ワンステップ代表の長谷川一男氏は「患者会のできることはもっと早期に情報をキャッチして、申請に関与していく必要がある」と語った。