・転移性乳がん患者におけるPIK3CA遺伝子ステータスが予後に与える影響を検証した第2相試験
・PIK3CA遺伝子変異のあるホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者では予後が不良だった
・PIK3CA遺伝子変異のあるトリプルネガティブ乳がん患者では全生存期間が良好だった
2020年1月24日、医学誌『Annals of Oncology』にて転移性乳がん患者におけるPIK3CA遺伝子ステータスが予後に与える影響を検証した第2相のSAFIR02試験(NCT02299999)の結果がGustave Roussy・Mosele F氏らにより公表された。
本試験は、転移性乳がん患者(N=649人)に対して次世代シーケンシング(NGS)によりPIK3CA遺伝子ステータスを測定し、PIK3CA遺伝子ステータスが転移性乳がん患者の予後に与える影響を比較検証した試験である。
本試験が開始された背景として、近年、新薬であるPI3キナーゼ(PI3K)阻害薬のPIK3CA遺伝子陽性のホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者に対する有効性、安全性が明らかになっている。しかしながら、PI3キナーゼ(PI3K)阻害薬が臨床的意義のある有用性を示す患者プロファイルは不明瞭である。以上の背景より、転移性乳がん患者におけるPIK3CA遺伝子ステータスが予後に与える影響が本試験にて検証された。
本試験に登録されたホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者364人のうち104人(28%)、トリプルネガティブ転移性乳がん患者255人のうち27人(10%)で、PIK3CA遺伝子変異が確認された。
そして、PIK3CA遺伝子変異のあるホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者は化学療法に対する感受性は低率(ORR:0.40,95%信頼区間:0.22‐0.71,P=0.002)であり、死亡(OS)のリスクはPIK3CA遺伝子変異のないホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者に比べて44%増加(HR:1.44,95%信頼区間:1.02‐2.03,P=0.04)した。
また、PIK3CA遺伝子変異のあるトリプルネガティブ乳がん患者の全生存期間(OS)中央値は24ヶ月に対してPIK3CA遺伝子変異のないトリプルネガティブ乳がん患者では12ヶ月と、PIK3CA遺伝子変異のあるトリプルネガティブ乳がん患者群で全生存期間(OS)が良好であった(P=0.03)。
以上のSAFIR02試験の結果よりGustave Roussy・Mosele F氏らは以下のように結論を述べている。”PIK3CA遺伝子変異のあるホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者に対する化学療法の感受性は低率であり、予後が不良であることが明らかになりました。また、PIK3CA遺伝子変異のあるトリプルネガティブ乳がん患者の全生存期間(OS)は良好であることが明らかになりました。”