2月22日、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第二部は、審議事項として9製品の審議を行った。うち抗がん剤関連は7製品。また、報告事項※として4製品を報告し、抗がん剤関連は3製品であった。
※報告事項:医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階において、承認して差し支えないとされ、部会では審議せず報告のみでいいと判断されたもの。
目次
審議品目
ジクトルテープ75mg
一般名:ジクロフェナクナトリウム
効能・効果:各種がんにおける鎮痛
ジクトルテープはフェニル酢酸系の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)。「変形性関節症、術後等の消炎・鎮痛等」を効果・効能にさまざまな剤型で発売されていたが、今回、がん疼痛に対する効能・効果を有する非オピオイド鎮痛剤としては初の貼付剤として承認された。
がん疼痛に対する薬物療法に関する国内外のガイドラインにおいて、NSAIDs等の非オピオイド鎮痛剤は痛みの強さに応じて、単剤もしくはオピオイド鎮痛薬との併用使用することが推奨されている。同剤は、経口摂取困難な患者にも投与可能で投与回数が少ない点がメリットとして挙げられ、侵襲性のないがん疼痛の管理における新たな治療選択肢となることを目的としている。
アキュミン静注
一般名:フシクロビン(18F)
効能・効果:初発の悪性神経膠腫を疑う患者における腫瘍の可視化。ただし、磁気共鳴コンピューター断層撮影検査による腫瘍摘出計画時における腫瘍摘出範囲の決定の補助に用いる
アキュミンは放射性フッ素(18F)で標識されたフルシクロビンを有効成分とするPETトレーサー。
腫瘍細胞は正常細胞よりもアミノ酸代謝が亢進しているため、アミノ酸トランスポーターを介して細胞内に取り込まれる作用機序を持つフルシクロビンを投与することで、腫瘍細胞にアミノ酸がより多く取り込まれる。それによりPET検査において腫瘍の可視化が可能となると考えられている。
神経膠腫の治療における第一選択は腫瘍摘出術であり、神経機能の温存を図りつつ可能な限り多くの腫瘍を摘出することが原則となっている背景から開発された。海外では、再発前立腺がんの診断に関する効能・効果で2016年初めて承認されて以降、欧米32カ国で承認されている。
ダラキューロ配合皮下注
一般名:ダラツムマブ(遺伝子組換え)、ボルヒアルロニダーゼアルファ(遺伝子組換え)
効能・効果:多発性骨髄腫
ダラキューロはダラツムマブとボルヒアルロニダーゼアルファの配合剤。
ダラツムマブは、骨髄腫細胞の表面に発現するCD38に結合するヒト型モノクローナル抗体。細胞の細胞膜上に発現するCD38に結合し、補体や免疫細胞が活性化することで腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。
ボルヒアルロニダーゼアルファは、結合組織におけるヒアルロン酸を加水分解する酵素。ボルヒアルロニダーゼアルファを配合することで、大容量の薬剤を短時間で投与することが可能となり、投与時間の短縮による患者負担の軽減などが期待できる。
なお、ダラツムマブは点滴による単剤投与においても、「多発性骨髄腫」の効能・効果にて承認されている。
ベネクレクスタ錠10mg、同50mg、同100mg
一般名:ベネトクラクス
効能・効果:急性骨髄性白血病
ベネクレクスタはBCL-2と呼ばれるタンパク質に対する阻害作用を有する低分子化合物。BCL-2に結合し、アポトーシスを誘導することで腫瘍細胞の増殖を抑える。
今回の適応追加により、強力な寛解導入療法の適応とならない未治療の急性骨髄性白血病(AML)患者が対象となり、代謝拮抗薬ビダーザ注射用と併用して用いる。
ポライビー点滴静注用140mg、同30mg
一般名:ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)
効能・効果:再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫
ポライビーはヒト化抗CD79bモノクローナル抗体とチューブリン重合阻害剤をリンカーで結合させた、ファーストインクラスの抗CD79b抗体薬物複合体(ADC)。
CD79bタンパクは、多くのB細胞で特異的に発現しており、ポラツズマブ ベドチンは正常細胞への影響を抑えつつCD79bに結合し、送達された化学療法剤によりB細胞を破壊する。
抗がん剤であるトレアキシン(一般名:ベンダムスチン塩酸塩)と併用して用いる。
レンビマカプセル4mg、同10mg
一般名:レンバチニブメシル酸塩
効能・効果:切除不能な胸腺がん
マルチキナーゼ阻害剤であるレンビマは、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)1/2/3、rearranged during transfection(RET)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)1/2/3/4、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)α、幹細胞増殖因子受容体(KIT)等のキナーゼを阻害することで腫瘍細胞の増殖を抑制する。
切除不能な胸腺がん患者に対する治療としては、現状、化学療法、放射線療法または化学放射線療法が行われている。化学療法は、カルボプラチンとパクリタキセルとの併用投与等の白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法が推奨されているものの、薬事承認はされていない。また、白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法歴のある切除不能な胸腺がんに対しては、標準的な治療は確立されていない。
2020年11月時点において、胸腺がんに係る効能・効果で同薬が承認されている国や地域はない。
ペマジール錠4.5mg
一般名:ペミガチニブ
効能・効果:がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がん
ペマジールは腫瘍細胞の増殖や生存、移動、血管新生において重要な役割をもつFGFRを選択的に阻害するファーストインクラスのFGFR阻害剤。
FGFRのリン酸化を阻害し、下流のシグナル伝達分子のリン酸化を阻害することにより、FGFR融合遺伝子などを有する胆道がんに対して腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。
ペマジールによる高リン血症に対処するため、ニプロの炭酸ランタン顆粒分包を併用する。また、ペマジールとFGFR2融合遺伝子陽性胆道がんのコンパニオン診断も承認されている。
報告品目
トレアキシン点滴静注用25mg、同100mg
一般名:ベンダムスチン塩酸塩
効能・効果:再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫
トレアキシンはナイトロジェンマスタード構造を有するベンゾイミダゾール誘導体。
アポトーシスの誘導と細胞の分裂期崩壊の誘導により、細胞傷害作用を発現すると考えられている。抗CD79b抗体薬物複合体であるポライビーと併用して用いる。
ビダーザ注射用100mg
一般名:アザシチジン
効能・効果:急性骨髄性白血病
ビダーザは核酸合成を阻害する代謝拮抗剤。細胞内でリン酸化を受けた後に細胞を傷害する作用とDNAに取り込まれメチル化を阻害することで細胞増殖を阻害する作用を持つ。
未治療の急性骨髄性白血病(AML)に対する単剤投与のほか、経口BCL-2阻害薬ベネクレクスタ(一般名:ベネトクラクス)との併用でも使用可能。NCCNガイドラインにおいて、ビダーザ単剤投与ならびにベネトクラクスとの併用投与はいずれも、強力な寛解導入療法の適応とならない未治療のAMLに対する治療として推奨されている。
炭酸ランタン顆粒分包250mg、同500mg
一般名:炭酸ランタン水和物
効能・効果:FGFR阻害剤投与に伴う高リン血症の改善
カルシウム非含有リン吸着剤である炭酸ランタンは、食直後に投与することで消化管において食物中のリン酸とランタンが難溶性の塩を形成し、糞便中に排泄される。それにより腸管からのリンの吸収を抑制すると考えられている。
FGFR阻害薬は、腎におけるリンの排泄を阻害することにより、高リン血症を誘発することが知られており、FGFR阻害薬であるペマジールと併用して使えるようにするための効能追加となる。
参照元:
厚生労働省 薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会)
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