・イタリア人の慢性骨髄性白血病患者が対象のレトロスペクティブ試験
・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が与えた影響を評価
・CML患者8665人のうち217人(2.5%)が感染し、死亡率は0.13%(12/8665人)だった
2021年6月9日~17日、バーチャルミーティングで開催された第25回欧州血液学会議(EHA2021)にて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がイタリア人の慢性骨髄性白血病(CML)患者に与えた影響について検証したレトロスペクティブ試験の結果がSapienza UniversityのMassimo Breccia氏らにより公表された。
本試験が開始された背景として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大は2019年12月の中国武漢にて始まり、イタリアでは2020年2月頃より新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が深刻化した。慢性骨髄性白血病(CML)患者に対するパンデミックの影響は限られた情報しかないため、後ろ向き観察が行われた。
本試験が検証された期間は、初回調査はイタリアにおけるロックダウン期間中(2020年3月~4月、フェーズ1)に、2回目の調査調査は2020年5月から2021年1月までに起きた2回のパンデミック(フェーズ2、3)の間に実施した。対象患者はイタリア国内の46施設の慢性骨髄性白血病(CML)患者8665人で、うち217人(2.5%)が新型コロナウイルス感染陽性と診断された。その患者背景は下記の通りである。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症の期間は、フェーズ1が30%、2020年5~8月が13%、2020年9月~2021年1月が57%だった。
陽性患者の年齢は50歳以下が26%、50~65歳が35%、65~75歳が18.8%、75歳以上が11%、性別は男性が73%であった。慢性骨髄性白血病(CML)の診断から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症までの期間中央値は6年(3ヶ月~18年)で、56%の患者がその他の疾患を併存していた。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症時の治療薬は、イマチニブが27%、ニロチニブが26%、ダサチニブが18%、ポナチニブが8%、ボスチニブが8%、アシミニブが2%で、11%は治療を受けていなかった。奏効ステータスは分子遺伝学的寛解(molecular remission)が74%、細胞遺伝学的完全寛解(complete cytogenetic remission)が6%、細胞遺伝学的部分寛解(partial cytogenetic remission)が3%、血液学的完全寛解(complete hematological response)が6%、TFR(treatment free remission)が11%だった。
診断時に確認された症状は発熱と呼吸器症状が28%、咳と味覚障害が13%、嗅覚障害が12%、孤立性発熱が10%、無症候性が20%だった。呼吸補助を必要としない入院は21人(9.6%)、呼吸補助を必要とする入院は18人(8.2%)であり、8人(3.6%)はICUに入院し、150人(69%)は治療なしの隔離のみであった。なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症中に患者の23%がチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の治療を中止した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡率は、新型コロナウイルスに感染した慢性骨髄性白血病(CML)患者で5.5%(N=12/217人)で、慢性骨髄性白血病(CML)患者群全体では0.13%(N=12/8665人)だった。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症後、ギランバレー症候群、斑状丘疹状の紅斑、肺線維症、細菌性心内膜炎などの発症が報告された。
以上のレトロスペクティブ試験の結果よりMassimo Breccia氏らは「本試験は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大1年後における造血器腫瘍の経過を報告した試験になります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が慢性骨髄性白血病(CML)に与える影響を明確にするために、さらなるフォローアップ解析が必要になります」と結論を述べている。
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