3月7日、アストラゼネカ株式会社は、慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む、以下CLL)を適応症として、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤のカルケンス(一般名:アカラブルチニブ、以下カルケンス)について、厚生労働省に適応拡大の申請を行ったと発表した。
CLLは骨髄中の造血幹細胞が異常なリンパ球となって過剰に増加する。異常細胞が増殖すると、正常な白血球や赤血球、血小板などが減少し、貧血や感染、出血を誘発する。CLLは欧米において白血病の中で最も罹患数が多い疾患であるが、日本においては年間の新規罹患者数は10万人あたり1人未満とまれな疾患に分類される。
今回の申請は国内第1相試験ならびに国際共同第3相ELEVATE-TN(ACE-CL-007)試験(NCT02475681)の結果に基づくもの。同試験では、未治療のCLL患者(N=535人)を対象に、カルケンス単剤療法、カルケンス+ガザイバ(一般名:オビヌツズマブ)併用療法、現座の標準治療であるクロラムブシル+ガザイバ併用療法に1:1:1に割付け、有効性と安全性を比較検証した。
その結果、カルケンス単剤療法とカルケンス+ガザイバ併用療法における無増悪生存期間(PFS)は、クロラムブシル+ガザイバ併用療法に対して統計学的有意かつ臨床的に意義のある改善を認めた(カルケンス単剤療法 HR:0.20、95%信頼区間:0.13-0.30、P<0.0001、カルケンス+ガザイバ併用療法 HR:0.10、95%信頼区間:0.06-0.17、P<0.0001)。
アストラゼネカ研究開発本部長の大津智子氏は、「今回の申請により、CLL治療におけるカルケンスのベネフィットをさらに拡大できると期待しています。CLL治療における課題として、『忍容性の維持と長期の症状コントロール』がありますが第3相ELEVATE-TN試験のデータでは、カルケンスは良好な忍容性を維持し、臨床的に意義のある無増悪生存期間の延長を示しました。カルケンスの単剤療法および併用療法が、未治療のCLL患者さんにとって1日も早く新たな選択肢となるよう、引き続き努めてまいります」と述べている。
なお、ガザイバの開発・販売元である中外製薬株式会社および日本新薬株式会社もELEVATE-TN(ACE-CL-007)試験の結果に基づき、3月4日付でCLLに対する適応拡大申請を行っている。
カルケンス(アカラブルチニブ)とは
カルケンスは次世代の選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤。BTKシグナル伝達はB細胞内において、B細胞の増殖、輸送、走化、接着に必要な情報伝達の活性化を引き起こすと言われている。BTKを介するB細胞受容体のシグナル伝達はCLLにおいて異常細胞増殖の基本的な経路のひとつである。
ガザイバ(オビヌツズマブ)について
糖鎖改変型タイプII型抗CD20モノクローナル抗体であるガザイバは、幹細胞や形質細胞以外のB細胞上に発現するCD20というタンパク質に結合し、標的となるB細胞を直接体内の免疫系とともに攻撃し破壊する。
参照元:
アストラゼネカ株式会社 プレスリリース
中外製薬株式会社 ニュースリリース
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