※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。
Ash(米国血液学会)では細胞治療のプレゼンテーションが注目を集めるだろうが、今日(11月8日)は英Autolus社にスポットライトが当たった。
今朝、米Blackstone社から1億5000万ドルの資金を獲得したことで、Autolus社はAshで細胞治療に関する衝撃的なobe-cel のデータを発表するプレッシャーから解放された。Autolus社(の株価)が前年比40%減であったことを考えると、Blackstone社はすでにデータの中からポジティブな要素を見つけ事実上の底値を狙った格好だ。
とはいえ、Autolus社が最先端の細胞治療に取り組む企業から、ありふれたCD19標的 CAR-T療法を商業化しようとする企業に転落したことに失望せずにはいられない。今のところ最も良いことは、obe-cel(obecabtagene autoleucel)が収益化されたことだろうが、他のAshでの発表はこのグループの将来の競争を示唆する。
Blackstone社は、1億ドルの株式と5000万ドルの現金でobe-celの権利を確保し、1桁台の販売ロイヤリティを受け取り、さらにマイルストーンベースの開発資金として1億ドルを支払うことになる。また、当プライベートエクイティグループは、Autolus社の取締役会に議席を確保した。
前奏曲?
見方によっては買収の前兆と見なすのに十分かもしれないが、5000万ドルの出資は極めて初期の段階であることを示唆している。それでも通常、プライベートエクイティは株価が底値になったときに攻撃を仕掛けることに異論はなく、Autolus社は一時に比し、かなりの落ち込みを経験している。
先週木曜日(11月4日)にAshの抄録が公開されたとき、Autolus社をカバーする証券アナリストは、成人急性リンパ性白血病(ALL)を対象とした新しい結合ドメインを持つCD19標的 CAR-T療法であるobe-celのFelix試験に注目していた。しかし、事前抄録では、学術的な製造プロセスの自動化について述べているだけで、データは何も示されていなかった。
したがって、投資家が今のところ頼りにしているのは、Felix試験は20人の被験者で85%のORRを示し、重篤なサイトカインの放出はなく、神経毒性の発生率は15%であったアカデミアで行われたAllcar19試験と同等の1ヵ月間の奏効率を確認しているというAutolus 社の言葉とBlackstone社の暗黙の推奨だけだ。
これは、イエスカルタ(一般名:アキシカブタゲン シロルユーセル)などに比べれば改善されているかもしれないが、CD19標的 CAR-T療法は、今日ではほとんど動きがない。例えば、Evaluate Pharma社は、第1相および第2相試験だけでこのような49のアセットをリストアップしている。
イエスカルタとブレヤンジ(一般名:リソカブタゲン マラルユーセル)がそれぞれ行っているリンパ腫の2次治療試験であるZuma-7試験とTransform試験が、プレナリーと主要な口頭発表によって注目を集めているにもかかわらず、これまで通り、Ashはより最先端の細胞治療のアプローチについての洞察を提供している。
これらの試験は、Car-T療法がリンパ腫治療の一次治療に進出できるかどうかを決定する鍵となるが、類似するスイス・ノバルティス社のキムリア(一般名:チサゲンレクルユーセル)の失敗に終わったBelinda試験がAshには不在のため、両試験の違いを掘り下げたいと思っていた人には残念な結果となった。
しかし、ノバルティス社は、CD19標的 CAR-T療法のYTB323とB細胞成熟抗原(BCMA)標的のPHE885に関する2つの初期段階の臨床抄録を発表しており、多くの関心を集めるはずだ。なぜなら、これらはノバルティス社が2日で製造できると主張しているプロジェクトに関するものであり、自家細胞治療に画期的な変化をもたらす可能性があるからだ。
多くのAshの抄録と同様に、記載されているデータは初期のカットオフからのものだが、生体外での培養時間を24時間に短縮し、最終製品にナイーブT細胞と幹細胞メモリーT細胞を保存する同社のT-Charge技術を検証することができる。
他のCD19標的の細胞治療アプローチの中で、投資家は米Fate社のCar-NKプロジェクトであるFT596にも注目するだろう。このプロジェクトは、Ash 2019では前臨床データのみであり、1年前には唯一の症例報告があったが、今年の抄録では17人の患者の詳細が記載されており、反応の持続性がAshでの大きな焦点となるはずだ。
FT596の抄録では、再発患者の再治療の可能性が述べられている。再治療の分野では、同種療法の米Allogene社も注目されているが、投資家は、FDAが同社のすべての臨床研究を保留していることに注目している。
一方、多発性骨髄腫では、米J&J社と米レジェンド社が実施しているcilta-celのCartitude-1試験に、BCMAを標的とした競合他社が対抗する。この試験では、処方薬ユーザーフィー法(PDUFA)の期限が3カ月延長され、2022年2月28日までとなった。
しかし、おそらく最近の傾向として、CAR-T療法よりも二重特異性抗体で混雑しているBCMAをターゲットとした後続品に再び関心が寄せられるだろう。ここでは、Gタンパク質共役受容体クラス5メンバーD(GPRC5D)を標的とする米メモリアルスローンケタリングがんセンターのCAR-TアセットであるMCARH109の初めての臨床データが待ち望まれており、初期の抄録データは印象的なものとなっている。
J&J社と米ジェンマブ社のタルケタマブは、昨年注目を集めた抗GPRC5D二重特異性抗体であり、投資家の注目を集めるはずだ。Autolus社は、チャンスがあったときにobe-celを収益化したのは正解だったが、その資金を活用するための時間的余裕はほとんどない。
Ashの年次総会は、12月11日から14日まで、ジョージア州アトランタで開催される。
Evaluate VantageのJacob Plieth氏は、ASHに先立ち、バイオテック投資家のBrad Loncar氏に会議のテーマについて話を聞いた。
■出典
Ash 2021 preview – as competition grows Autolus monetizes