※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。
この新たな提携契約は良い取引だとアーカス社は主張するが、株主は意見を異にする。
投資家が買収の機運の高まりを感じ取っている中、提携契約という結果では少々の失望を招くことになるだろう。実際、米アーカス・バイオサイエンス社(アーカス社)は、米ギリアド・サイエンス社(ギリアド社)が4月中旬にアーカス社の株式購入を検討しているという噂により、今年に入ってから株価が3倍の値を付けた。
結局、ギリアド社はわずか2億ドルで、がんに特化したバイオテック企業であるアーカス社の株式約10%を取得することになったが、それに加えて、抗PD-1抗体や抗TIGIT抗体などアーカス社のパイプラインに含まれる候補物質を共同開発するための10年間のパートナーシップを結ぶことになった。この提携のの価値は数十億ドルに達するが、その先行投資額はわずか1.75億ポンドに過ぎない。この失望を反映して、今朝(5月27日)、アーカスの株価は9%の下落となった。
今日の電話会議でアーカス社の経営陣は、特に資産(薬剤)の戦略的な併用使用を促進するうえで、単一のパートナーと広範な協力関係を築くことの利点を強調した。この併用使用は、アーカス社にとって重要だ。免疫チェックポイント阻害薬であるzimberelimab(ジンベレリマブ)は、進行性固形がんを対象に抗TIGIT抗体であるAB154との併用試験が行われている。また、非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした三剤併用試験(上記2つとアデノシンA2B受容体拮抗薬「AB928」との併用)では、今年末に中間データが得られる予定だ。
しかしながら、3月に米フォーティーセブン社を買収したことで得た資産(薬剤)を含め、将来的にギリアド社の薬剤との併用がどのように検討されるのかは未だ不明である。
抗TIGIT抗体旋風
スイス・ロシュ社が抗TIGIT抗体の作用機序に対する信頼を年初に明らかにして以来、あらゆる抗TIGIT抗体と同様にAB154は大きな話題を呼んでいる。ギリアド社はこの薬剤クラスのプロジェクトを熱望していたことがうかがえ、実際、ギリアド社の最高経営責任者ダニエル・オデイ氏はロシュ社出身でもあり、ギリアド社をロシュ社とより対等な立場に置きたいと考えていたのかもしれない。
そうであれば、2週間前にASCO(米国臨床腫瘍学会学術集会)の抄録が公開され、ロシュ社の抗TIGIT抗体であるTiragolumab(ティラゴルマブ)に関するデータが明らかになったことにより、その思いはさらに高まったのかもしれない(Asco 2020 – first-line lung cancer focus, May 14, 2020)。アーカス社の最高医療責任者であるウィリアム・グロスマン氏は、同社はロシュ社のデータ、特にPD-L1高値群で見られる兆候に「大きな期待をしている」と述べた。氏の発言は、三剤併用試験であるArc-7試験にPD-L1陽性のNSCLC患者のみを登録するというアーカス社の戦略を裏付けるものである。
また、アーカス社は抗PD-1抗体についても強気の姿勢だ。「Zimberelimabは、上市済みのPD-(L)1抗体と同様に見える。我々が作成したデータ上は、キイトルーダやオプジーボともほとんど区別がつかないように見える」と、アーカス社の最高経営責任者であるテリー・ローゼン氏は述べている。
これは大胆な発言だ。ギリアド社が同意した場合、同社はこれらのプロジェクトに参加する権利を持ち、米国ではアーカス社と共同開発・共同プロモーションを行うが、他の地域では独占的な権利を得ることになる。ギリアド社がこれらのプロジェクトに賛同しなかった場合、アーカス社は他のパートナーを自由に探すことができる。
■出典
Gilead opts not to buy Arcus