※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。
すでに販売されているニュベクオを誇るOrion社は、次の大きな希望である前立腺がんをメルク社にライセンスしている。
フィンランドのOrion社は、がんと疼痛に焦点を当てるために研究開発を縮小してから、わずか4ヶ月で、その恩恵を受けることができた。今日(2022年7月13日)、米メルク・アンド・カンパニー社と締結したライセンス契約は、前立腺がんの中期のプロジェクトであるODM-208を対象としており、契約一時金の額としては今年2番目の大きさだ。
この提携は、メルク社が前立腺がんへの取り組みをさらに強化することを示すもので、米国グループはすでにリムパーザ(一般名:オラパリブ)の遺伝子変異に基づく適応を取得している。一方、あまり知られていないOrion社は、独バイエル社と提携して非転移性疾患を対象に販売されているニュベクオ(一般名:ダロルタミド)をベースにしている。
2億9000万ドルの取引のきっかけは、Orion社が研究開発の集大成としてODM-208を発表したことに加え、2022年2月のAsco-GUで発表されたデータであったと思われる。
この学会では、ODM-208を始めてヒトに投与したCypides試験の結果が紹介された。44名の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者は、ザイティガ(一般名:アビラテロン)やイクスタンジ(一般名:エンザルタミド)で進行した患者ばかりだった。32%がPSA値50%以上の減少を達成し、アンドロゲン受容体リガンド結合ドメインに変異を有するサブグループでは68%にまで達した。
Source: Professor Karim Fizazi & Asco-GU.
ODM-208は、ステロイドの生成に関与する酵素であるチトクロームP450 11A1を阻害することにより作用する。前立腺がんでは、ザイティガやイクスタンジ治療後もアンドロゲン受容体が寄与し続けており、非アンドロゲン性ステロイドホルモンによって再活性化されると考えられている。
ODM-208は、ステロイドの生合成を完全に停止させ、前立腺がんの進行を抑制するとされている。Evaluate Pharma社は、CYP11A1阻害に関する他のがん領域での研究成果を確認できていない。米Angion社はチトクロームP450阻害に積極的で、前臨床でCYP17阻害剤ANG-3279を前立腺がんで検討していたが、現在は中止されており、CYP11B2阻害剤を開発しているが、がんを対象とはしていない。
メルクによる買収
いずれにせよ、メルク社は明らかに抗ステロイド剤によるアプローチの可能性を説得された。メルク社は、ODM-208と他のCYP11A1阻害剤の共同開発権として2億9000万ドルをOrion社に提供し、世界的な独占ライセンスを取得するオプションも保有している。
メルク社と英アストラゼネカ社のリムパーザは、HRR遺伝子変異を有する二次治療患者への使用を認めるという異例の広範な米国での承認のおかげで、既に去勢抵抗性前立腺がんの分野で地位を確立している。しかし、リムパーザとキイトルーダの併用は、3月に前立腺がんを対象としたKeylynk-010試験で失敗している。
それにもかかわらず、メルクは明らかに前立腺を本命視しており、Orion社は神経科学と吸入薬物送達への投資を削減し、がんと疼痛に注力することでプレゼンスを確立する意向を示していた。フィンランドのOrion社は、ニュベクオとODM-208を楽観視できる理由として挙げている。
前者はバイエル社に権限が譲渡され、非転移性の去勢抵抗性前立腺がんで承認されている。また、今年NEJMに発表されたArasens試験の良好なデータにより、ホルモン感受性前立腺がんという第2のニッチな分野への可能性も開かれた。
ホルモン感受性前立腺がんに関しては、ザイティガが、また非転移性の去勢抵抗性前立腺がんと併せてイクスタンジが、既に発売されているが、Evaluate Pharma社のコンセンサスによれば、ニュベクオは2026年までにブロックバスターになると予想されている。ODM-208はまだほとんどのアナリストのモデルには含まれていないが、両社はこの事実がすぐに変わることを望んでいる。
■出典
Orion’s cancer reset bears fruits