・治療歴のあるHER2陽性能転移を有する進行性乳がん患者が対象の第1相試験
・ツカチニブ(ONT-380)+ハーセプチン併用療法の忍容性・安全性を比較検証
・ツカチニブの最大耐用量は1日2回300mg、1日1回750mgと決定され、安全性と抗腫瘍効果が認められた
2020年8月、医学誌『Annals of Oncology』にて治療歴のある脳転移を有するHER2陽性進行性乳がん患者に対する経口HER2阻害薬であるツカチニブ(ONT-380)+ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ、以下ハーセプチン)併用療法の忍容性・安全性を検証した第1相試験(NCT01921335)の結果がDana-Farber Cancer InstituteのO. Metzger Filho氏らにより公表された。
本試験は、治療歴のある脳転移を有するHER2陽性進行性乳がん患者に対して21日を1サイクルとして1日2回ツカチニブ450mg+ハーセプチン6mg/kg併用療法を投与する群(N=22人、コーホートA)、または21日を1サイクルとして1日1回ツカチニブ750mg+ハーセプチン6mg/kg併用療法を投与する群(N=19人、コーホートB)に分け、主要評価項目として最大耐用量(MTD)、副次評価項目として治療開始16週時点の臨床的有用率(CBR)を検証した第1相試験である。
HER2陽性乳がんにおいて脳転移は頻繁に発生する。基礎試験の結果、経口HER2阻害薬であるツカチニブは頭蓋内の病変(脳転移)に対して選択的に腫瘍縮小効果があることが確認されている。以上の背景より本試験が開始された。
本試験に登録された41人の患者背景は下記の通りである。全治療歴中央値は2レジメン。83%の患者が脳放射線治療後に病勢の進行を認めていた。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
主要評価項目である最大耐用量(MTD)はコーホートAで1日2回ツカチニブ300mg、コーホートBで1日1回ツカチニブ750mgとして決定された。また、最も多くの患者で確認された用量制限毒性(DLT)は血小板減少症、アスパラギン酸トランスアミナーゼ/アラニンアミノトランスフェラーゼの上昇であった。
副次評価項目である治療開始16週時点の臨床的有用率(CBR)はコーホートAで35%(N=6人)、コーホートBで53%(N=9人)を示した。また、無増悪生存期間(PFS)中央値はコーホートAで3.4ヵ月、コーホートBで4.1ヵ月を示した。
以上の第1相試験の結果よりO. Metzger Filho氏らは「治療歴のある脳転移を有するHER2陽性進行性乳がん患者に対する経口HER2阻害薬ツカチニブ(ONT-380)+ハーセプチン併用療法は、良好な抗腫瘍効果を示し、忍容性も問題ありませんでした」と結論を述べている。
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