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【PR】治療選択の考え方-がん治療の道しるべ肝細胞がん薬物治療と患者視点 Vol.3

  • [公開日]2020.10.19
  • [最終更新日]2020.11.16

提供:バイエル薬品株式会社

シリーズの3回目では、患者調査をもとに、患者さんは治療目標を達成するためにどのような治療を望んでいるのかを理解したうえで、肝細胞がんの薬物治療に対する治療選択の考え方について、専門家とともに検討していきます。

古瀬純司 氏:杏林大学医学部・大学院医学系研究科 腫瘍内科学 教授
長谷川 潔 氏:東京大学大学院医学系研究科 肝胆膵外科 人工臓器・移植外科 教授
司会/川上祥子:がん情報サイト「オンコロ」編集部

治療目標を達成するために患者さんが求めていることは

─本シリーズのVol.2でもご紹介しましたが、がん情報サイト「オンコロ」編集部とバイエル薬品は、2019年11~12月に肝細胞がん患者さんとご家族を対象としたアンケート調査を実施しました。この調査では、治療の効果と副作用に対する考え方を知るために、治療目標を達成するうえで、どのような治療を求めているのかということもお尋ねしています。回答者には7つの選択肢を示し、必要性の高いものから1~3位の順位をつけてもらいました。詳細については以下の表をご参照ください。先生方はこの結果についてどう評価されますか。

古瀬 治療に求める7つの選択肢のうち、「より長く生きられる」という項目を1位に選んだ人が最も多かったというのは当然のことでしょう。一方で、1~3位を総合すると「体力が落ちたり、日常生活に影響が出たりする副作用が起きにくい」という項目が最多でした。肝細胞がんの治療を受ける患者さんの中で、腫瘍が小さくなることより生活の質を維持することを治療目標として選んだ人が多かったのは興味深いことです。肝細胞がんの薬物治療の目標設定と治療選択の参考になる貴重なデータだと改めて思います。

患者さんが腫瘍の縮小効果より生活の質の維持を重視している調査結果は興味深いです。―古瀬純司 先生

長谷川 同感です。この結果から「長生きはしたい。でも、あまりしんどい思いはしたくない」という患者さんの切実なニーズがよく伝わってきます。消化器がんでも外科的処置の期間が比較的短い胃がんや大腸がんを患う場合は「薬物治療が多少つらくてもしっかり治したい」という要望が強いのに対し、肝細胞がんでは「治療効果が必ずしも高くなくても現状維持できればよい」という要望が強いことを感じます。これは、手術のみならずラジオ波焼灼療法や肝動脈(化学)塞栓療法といった長期にわたる局所治療の後で全身薬物治療を受ける肝細胞がん患者さんにみられる特徴的な結果かもしれません。

古瀬 肝細胞がんの薬物治療を行う際には、「治す」ことよりも「がんと長く付き合っていく」ことを前提とすることが多いですからね。患者さんの治療目標に寄り添った薬物治療をともに考えるうえで、薬剤の選択においてもそれぞれの効果や副作用のバランスを考慮することが求められるでしょう。

肝細胞がん治療に使用する薬剤と主な副作用について

─「生活の質を大切にしたい」のであれば副作用の影響や薬物治療のデメリットもよく理解しておくことが必要ですね。この点について詳しく教えてください。

古瀬 肝細胞がんの治療薬は、マルチキナーゼ阻害剤、抗VEGFR-2抗体免疫チェックポイント阻害剤の3つのカテゴリーに大きく分かれます。マルチキナーゼ阻害剤の中には複数の種類があり、共通する副作用として手足症候群や下痢があります。その出方は薬剤によって異なるため、そのことを加味したうえで薬剤の選択と管理をしていくことが重要です。

 一方で、注射薬である抗VEGFR-2抗体と免疫チェックポイント阻害剤には投与経路によるメリット・デメリットがあります。患者さんにとって頻繁に通院せずに治療が続けられる経口薬のほうが負担は少ないかもしれませんが、注射薬の場合、医師が診察して患者さんの状態を判断したうえで投与する点で安全性に対するメリットがあります。抗VEGFR-2抗体によくみられる副作用は比較的マイルドであるものの、血管新生を阻害する作用機序から、高血圧や尿蛋白などの副作用が出やすい傾向があるため、治療の都度、医師の診察や血液検査が必要とされています。

 免疫チェックポイント阻害剤は、さまざまながん種で広く使われるようになってきました。しかし、免疫反応に関する有害事象が全身のどこに出てくるかということは投与してみなければわかりません。内分泌系の障害、糖尿病、肝障害、消化管障害などを起こす可能性があり、これらの症状に関係する診療科と連携体制を取ったうえで治療を行う必要があります。そのため、どこの医療機関でも行えるものではなく、限られた施設でしっかり取り組んでいただく治療になります。

長谷川 それぞれ特徴的な副作用を持つ薬剤をうまく使っていくためには、その管理がとても重要です。当科ではきめ細かい対応をするために、看護師さんや薬剤師さんにも副作用対策に関わってもらっています。また、古瀬先生がご指摘されたように免疫チェックポイント阻害剤の副作用をマネジメントするには他の診療科との緊密な連携が肝心だと思います。

特徴的な副作用を持つ薬剤をうまく使うには、多職種連携による管理がとても重要です。―長谷川 潔 先生

生活の質に影響を与える副作用とそのマネジメント

─副作用の管理においては多職種や他科との連携が不可欠だということですね。患者さんは日常生活に影響が出ることも心配していますが、そのような副作用はありますか。

古瀬 副作用には、自覚症状が出現し自分でわかるものと血液検査などのデータでわかるものがあります。後者の副作用には白血球や血小板の減少といったものがありますが、これは数値がよほど低下しなければ日常生活にあまり影響を及ぼしません。患者さんの生活の質を低下させる副作用としては前者であることが多く、代表的なものとしては手足症候群、倦怠感、下痢などがあります。

長谷川 マルチキナーゼ阻害剤が最初に登場したとき、私たちは「手足症候群」という副作用と初めて向き合うことになりました。これは高頻度に起こり、直接生命を脅かすものではないけれど、手足の皮膚が障害されることによって患者さんの日常生活が著しく損なわれ、しばしば休薬の原因となりました。当科においても皮膚科や多職種と連携して副作用の対策に取り組みました。知見と経験を積み重ねた現在では、クリームを塗る、圧迫を避けるといった予防法が定着し、看護師さんや薬剤師さんにもサポートしてもらいながら手足症候群の副作用をうまくマネジメントしています。

古瀬 マルチキナーゼ阻害剤の登場から十数年以上経過した今、手足症候群が原因で治療を中断してしまう患者さんは、当科ではほとんどいらっしゃいませんね。

─それを聞いて安心しました。倦怠感や下痢についてはどのように対応されていますか。

長谷川 倦怠感への対応は難しく、治療を中断する原因になることもあります。この症状がひどくなったときは休薬し、体調が回復してきたら薬剤を減量して再開するといった方法が考えられるでしょう。

古瀬 下痢については水分を多めに摂ってもらったうえで下痢止めを使うようにしています。こうした副作用のコントロールが難しいときは、長谷川先生もアドバイスされているように一時的に休薬するほか、薬剤を変えてみるのも一案です。つらい副作用を我慢して薬物治療を続けた結果、生活の質が著しく低下してしまうとしたら、それは本末転倒ですから。

副作用を我慢して薬物治療を続けた結果、生活の質が低下するのは本末転倒です。―古瀬純司 先生

長谷川 同感です。肝細胞がんの薬物治療をなるべく継続できるよう生活の質を低下させないことが重要です。そのためには、患者さんの訴えによく耳を傾け、治療方針について何度も話し合うことが必要だと思います。

古瀬 ええ。医療者は「患者さんの生活の質を維持しながら、できるだけ長く治療を続けていく」という視点を常に忘れないようにすることが大切です。

生活の質を低下させないように薬物治療中も患者さんの訴えをよく聞くことが必要です。―長谷川 潔 先生

─ありがとうございました。薬物治療の副作用については多職種連携で対応し、いろいろな対処法があることがよくわかりました。患者さんも副作用を我慢せずに医師に率直に伝えていくことが重要ですね。最終回となるVol.4では、医療者と患者さんが治療目標を共有し、ともに歩むためのヒントについて伺います。

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長谷川 潔 氏(はせがわ・きよし)
1993年、東京大学医学部卒業。
東京大学医学部附属病院、同大学大学院医学系研究科肝胆膵外科、人工臓器・移植外科准教授を経て2017年より現職。
原発性転移性肝がんの外科治療が専門。

古瀬純司 氏(ふるせ・じゅんじ)
1984年、千葉大学医学部卒業。
国立がん研究センター東病院、米国・トマスジェファーソン大学留学等を経て2008年より現職。
日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の肝胆膵グループ代表。

 

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