・生殖細胞系列ALB2遺伝子変異または体細胞系列BRCA1/2遺伝子変異進行性乳がん患者が対象の第2相試験
・リムパーザ単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・客観的奏効率は生殖細胞系列PALB2遺伝子変異群で33%、体細胞系列BRCA1/2遺伝子変異群で31%を示した
2020年10月29日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて生殖細胞系列(g)PALB2遺伝子変異/体細胞系列(s)BRCA1/2遺伝子変異進行性乳がん患者に対するPARP阻害薬であるオラパリブ(商品名リムパーザ;リムパーザ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相試験の結果がBeth Israel Deaconess Medical CenterのNadine M. Tung氏らにより公表された。
本試験は、生殖細胞系列PALB2遺伝子変異/体細胞系列BRCA1/2遺伝子変異進行性乳がん患者(N=54人)に対して1日2回リムパーザ300mg単剤療法を投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、臨床的有用率(clinical benefit rate)を検証した第2相試験である。なお、本試験では生殖細胞系列PALB2遺伝子変異群をコーホート1、体細胞系列BRCA1/2遺伝子変異群をコーホート2として設定している。
本試験が開始された背景として、前立腺がん患者を対象にした研究にて、PARP阻害薬は生殖細胞系列BRCA1/2遺伝子変異以外の相同組換え修復(HR)関連遺伝子変異に対しても有効性があることが示されている。以上の背景より、生殖細胞系列PALB2遺伝子変異/体細胞系列BRCA1/2遺伝子変異進行性乳がん患者に対するPARP阻害薬リムパーザの有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)はコーホート1で33%(90%信頼区間:19%-51%)、コーホート2で31%(90%信頼区間:15%-49%)を示した。副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はコーホート1で13.3ヵ月(90%信頼区間:12ヵ月-未到達)、コーホート2で6.3ヵ月(90%信頼区間:4.4ヵ月-未到達)を示した。
以上の第2相試験の結果よりNadine M. Tung氏らは「生殖細胞系列PALB2遺伝子変異/体細胞系列BRCA1/2遺伝子変異進行性乳がん患者に対するPARP阻害薬リムパーザ単剤療法は、本疾患の治療選択肢として有効です」と結論を述べている。
この記事に利益相反はありません。