目次
尿路上皮がん(膀胱がん) オプジーボの第1/2相試験
プラチナ製剤を含む併用化学療法後の進行例に単剤治療で持続的奏効 Lancet Oncol
プログラム細胞死受容体1(PD-1)標的抗体の免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(商品名オプジーボ)が、膀胱がんの約90%を占める尿路上皮がん患者に対する二次治療以降の単剤療法で24.4%の奏効率を示した。米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPadmanee Sharma氏らが第1/2相試験(CheckMate 032、NCT01928394)の中間解析結果を2016年10月9日のLancet Oncol Onlineに発表した。
プラチナ製剤を含む化学療法後進行尿路上皮がん患者にオプジーボを使用する試験
CheckMate 032はフィンランド、ドイツ、スペイン、英国、および米国の16施設で実施されている無作為化非盲検試験で、プラチナ製剤を含む化学療法後に進行した局所進行、または転移性の尿路上皮がん(腎盂、尿管、膀胱、または尿道の上皮内がん)患者を対象とし、オプジーボ3mg/kgを2週ごとに静注した。主要評価項目は、試験者判定の奏効率であった。
2014年6月5日から2015年4月24日に登録された86人のうち、78人は少なくともオプジーボを1回投与され、2016年3月24日のデータカットオフ時までの追跡期間は、最短で9カ月、中央値は15.2カ月、オプジーボの投与回数中央値は8.5回であった。
オプジーボ単剤の二次・三次治療は化学療法を凌ぐ成績の可能性~完全奏効6%~
試験者判定の奏効率は、24.4%(19/78人)で確定し、完全奏効(CR)は5人(6%)、部分奏効(PR)は14人(18%)であった。奏効例19人中、12人は中間解析時も奏効を維持し、奏効率は腫瘍組織のPD-1リガンド(PD-L1)発現レベルによる差はなく、1%未満の患者集団では26.2%(11/42人)、1%以上の患者集団では24.0%(6/25人)であった。
全生存期間(OS)中央値は9.7カ月で、治療1年後の全生存率は46%、無増悪生存(PFS)期間中央値は2.8カ月、治療1年後のPFS率は21%であった。
プラチナ製剤を含む併用化学療法にもかかわらず病勢進行、あるいは再発した転移性尿路上皮がん患者の予後は悪く、生存期間の中央値はおよそ6カ月と報告されている。二次治療としての化学療法ではほとんど効果が得られないのが実状で、毒性も強い。そうした条件下で、オプジーボ単剤の治療による生存ベネフィットは化学療法を十分に上回るものであった。
安全性
治療との因果関係が否定できないグレード3以上の有害事象は22%(17/78人)に発現し、主にリパーゼ上昇(5%)、アミラーゼ上昇(4%)、疲労(3%)、斑状丘疹状皮疹(3%)、呼吸困難(3%)、リンパ球数減少(3%)、および好中球数減少(3%)であった。治療との因果関係が否定できない重篤な有害事象は8人(10%)に認められ、そのうちグレード4の間質性肺炎を発現した1人、およびグレード4の血小板減少症を発現した1人は、いずれも治療との因果関係が否定されずオプジーボの投与を中止したが、後に死亡した。
尿路上皮がんの患者は合併症や腎機能障害を示す傾向があるのが前提とすれば、本試験の患者集団はオプジーボの複数回の投与に耐容性を示したことから、長期的で全般的な忍容性プロフィールは管理可能であることが示された。
免疫チェックポイント阻害療法はBCG膀胱内注入療法と同様のアプローチ
転移のある尿路上皮がんの一次治療はプラチナ製剤を含む化学療法で、ゲムシタビン+シスプラチンの併用療法(GC療法)が主流だが、腎障害の程度によりシスプラチンを投与できない患者が25%から50%は存在する。化学療法剤を用いた一次治療で進行、あるいは再発した場合の二次治療は、これまでに様々な試験が実施されてきたものの、いずれも奏効率が10%以下と低く、未だ標準的な二次治療は確立されていない。
免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれるオプジーボは、PD-1とPD-L1の相互作用による抗腫瘍免疫回避のメカニズムを解除する免疫療法だが、このアプローチは、すでに証明されているBCG膀胱内注入療法の一定の有効性から、その可能性は有望と考えられる。というのも、BCGによる効果は弱毒化した結核菌による免疫誘導作用を反映しており、80%から90%の患者でがんの消失が確認されている。BCG膀胱内注入療法は、転移がなく、筋層に浸潤していない上皮内がんを対象として、膀胱全摘に代わる第一選択とされ、高悪性度の場合は摘出術後の補助療法としても用いられる。
2016年5月、米国食品医薬品局(FDA)は、PD-L1標的抗体の免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブ(商品名Tecentriq)を、プラチナ製剤を含む化学療法後に進行した転移性尿路上皮がんの適応で承認した。また、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)標的抗体の免疫チェックポイント阻害薬イピリムマブ(商品名ヤーボイ)が、局所進行尿路上皮がん患者の抗腫瘍免疫反応を増強し、腫瘍を縮小したという試験結果も報告されている。
腎障害による副作用の懸念から化学療法の選択肢が限定される尿路上皮がん患者において、作用機序の異なるオプジーボの安全性は患者にとって極めて重要で、治療の長期化に耐容可能であるということは、リスク-ベネフィットの良好なバランスが維持される可能性も高い。
記事:川又 総江 & 可知 健太
リサーチのお願い
この記事に利益相反はありません。