プロテアソーム阻害薬の必発の副作用といえば末梢神経障害です。末梢神経障害とは脳と脊椎以外の神経の感覚に障害が生じる副作用で、重症度の高い末梢神経障害となりますと日常生活に支障を来すほどのレベルです。
多発性骨髄腫のキードラッグであるプロテアソーム阻害薬のベルケイド(ボルテゾミブ)で生じる末梢神経障害の症状は、感覚性神経障害及び神経障害性疼痛が中心ですが、稀に感覚障害と運動障害が混在するニューロパチーも発症します。
ベルケイド(ボルテゾミブ)による末梢神経障害は用量依存性、累積蓄積量依存性の傾向を示しますので、大半の末梢神経障害は減量、投与中止、投与方法の変更などにより対処可能です。
しかし、末梢神経障害が重症化した場合には稀に不可逆的な経過を辿るために、ベルケイド(ボルテゾミブ)を原因とする末梢神経障害には注意が必要です。
過去に重度の末梢神経障害を経験した患者さん、医師はこの副作用を懸念して、多発性骨髄腫の治療薬としてプロテアソーム阻害薬を使いたいにも関わらず、免疫調節薬(IMiDs)のレブラミド(レナリドミド)を選択しているのはではないでしょうか?
そんな方々には新規のプロテアソーム阻害薬であるカイプロリス(カルフィルゾミブ)、ニンラーロ(イキサゾミブ)の発売は吉報といえるでしょう。
なぜなら、カイプロリス(カルフィルゾミブ)、ニンラーロ(イキサゾミブ)はプロテアソーム阻害薬でありながら、末梢神経障害の副作用の発症が少ないからです。
ベルケイド(ボルテゾミブ)、カイプロリス(カルフィルゾミブ)、ニンラーロ(イキサゾミブ)の3剤を直接比較した大規模臨床試験は実施されていないので、同じ背景の患者さん同士での結果を比較することはできませんが、例えば大規模試験でレブラミド(レナリドミド)、デキサメタゾンと併用したレジメンで投与した時の末梢神経障害の発症率は、たしかにカイプロリス(カルフィルゾミブ)、ニンラーロ(イキサゾミブ)の方がベルケイド(ボルテゾミブ)より末梢神経障害の発症率が低いです。
特に、重症度の高いグレード3以上の末梢神経障害の発症率はベルケイド(ボルテゾミブ)を併用した郡が、レブラミド(レナリドミド)、デキサメタゾン郡よりも明らかに高率でした。しかし、カイプロリス(カルフィルゾミブ)、ニンラーロ(イキサゾミブ)を併用した郡は、レブラミド(レナリドミド)、デキサメタゾン郡と比較してもたいして変わりませんでした。
以上のことから、カイプロリス(カルフィルゾミブ)、ニンラーロ(イキサゾミブ)はプロテアソーム阻害薬の最大の弱点である副作用の末梢神経障害を克服した新薬と巷では噂されています。ベルケイド(ボルテゾミブ)の開発企業である米国アムジェン社(Amgen Inc.)がカイプロリス(カルフィルゾミブ)、ニンラーロ(イキサゾミブ)を開発したので、当然といえば当然ですが。
この記事に利益相反はありません。