・過去の臨床試験の結果、未治療転移性メルケル細胞がん患者の無増悪生存期間(PFS)中央値は3.1-4.6ヶ月である
・バベンチオは未治療転移性メルケル細胞がん患者の一次治療として主要評価項目である6ヶ月奏効持続率(DOR)は83%を示した
・バベンチオは未治療転移性メルケル細胞がん患者の一次治療として副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は9.1ヶ月(1.9ヶ月-未到達)を示した。
2018年3月22日、医学誌『JAMA Oncology』にて未治療の転移性メルケル細胞がん患者に対して抗PD-L1抗体薬であるアベルマブ(商品名バベンチオ;以下バベンチオ)単剤療法を投与した第II相試験であるJAVELIN Merkel 200 partB試験(NCT02155647)の有効性、安全性の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer Center・Sandra P. D’Angelo氏らにより公表された。
JAVELIN Merkel 200 partB試験とは、未治療の転移性メルケル細胞がん患者(N=39人)に対して2週間に1回バベンチオ10mg/kgを病勢進行または治療継続が困難になる有害事象(AE)が発症するまで投与し、主要評価項目として少なくとも6ヶ月の奏効持続期間(DOR)、副次評価項目として全奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性などを検証した多施設共同シングルアームのオープンラベル第II相試験である。
本試験の患者背景は下記の通りである。年齢中央値75.0歳(47-88)、65歳未満20.5%(N=8人)、65歳以降79.5%(N=31人)。性別は男性76.9%(N=30人)、女性23.1%(N=9人)。人種は白人84.6%(N=33人)、黒人2.6%(N=1人)、その他12.9%(N=5人)。ECOG Performance Statusはスコア0が79.5%(N=31人)、スコア1が20.5%(N=8人)。
原発腫瘍部位は皮膚100%(N=39人)。ベースライン時の他臓器転移の有無はあり66.7%(N=26人)、なし20.5%(N=8人)、不明12.8%(N=5人)。化学療法の前治療歴はあり12.8%(N=5人)、なし87.2%(N=34人)。
上記背景を有する患者に対してバベンチオを投与したフォローアップ期間中央値5.1ヶ月(0.3-11.3ヶ月)時点の結果は下記の通りである。主要評価項目である6ヶ月奏効持続率(DOR)は83%(95%信頼区間:46%-96%)を示した。なお、3ヶ月奏効持続率(DOR)は93%(95%信頼区間:61%-99%)を示した。
副次評価項目である全奏効率(ORR)は6ヶ月奏効持続率(DOR)を達成した群で71.4%(95%信頼区間:41.9%-91.6%)、その内訳は完全奏効(CR)28.6%(N=4人)、部分奏効(PR)42.9%(N=6人)、病勢安定(SD)7.1%(N=1人)、病勢進行(PD)14.3%(N=2人)。3ヶ月奏効持続率(DOR)を達成した群で62.1%(95%信頼区間:42.3%-79.3%)、その内訳は完全奏効(CR)13.8%(N=4人)、部分奏効(PR)48.3%(N=14人)、病勢安定(SD)10.3%(N=3人)、病勢進行(PD)24.1%(N=7人)。
また、3ヶ月無増悪生存期率(PFS)は67%(95%信頼区間:48%-80%)、無増悪生存期間(PFS)中央値9.1ヶ月(1.9ヶ月-未到達)を示した。
一方の安全性としては、バベンチオ投与により全グレードの治療関連有害事象(TRAE)を発症した患者は71.8%(N=28人)、グレード3の治療関連有害事象(TRAE)を発症した患者は20.5%(N=8人)を示し、その内訳は下記の通りである。
全グレードの治療関連有害事象(TRAE)としては倦怠感23.1%(N=9人)、インフュージョンリアクション23.1%(N=9人)、無力症7.7%(N=3人)、リパーゼ上昇7.7%(N=3人)、ALT上昇7.7%(N=3人)などである。
グレード3の治療関連有害事象(TRAE)としてはインフュージョンリアクション2.6%(N=1人)、リパーゼ上昇2.6%(N=1人)、ALT上昇2.6%(N=1人)、AST上昇2.6%(N=1人)、クレアチンキナーゼ上昇2.6%(N=1人)、自己免疫性腎炎2.6%(N=1人)、腸炎2.6%(N=1人)、歩行障害2.6%(N=1人)、多発性神経障害2.6%(N=1人)、腫瘍随伴症候群2.6%(N=1人)、トロポニン上昇2.6%(N=1人)である。なお、グレード4以上の治療関連有害事象(TRAE)を発症した患者はいなかった。
以上のJAVELIN Merkel 200 partB試験の結果よりSandra P. D’Angelo氏らは以下のように結論を述べている。”未治療の転移性メルケル細胞がん患者に対する一次治療としてのバベンチオ単剤療法は良好な抗腫瘍効果を示し、その奏効持続期間は長期であることが本試験より示されました。転移性メルケル細胞の標準治療としてバベンチオ単剤療法の有効性を確立するため、さらなる臨床試験を実施していく必要があります。”
この記事に利益相反はありません。