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肉腫とは
脂肪や筋肉、骨などの非上皮細胞(支持組織)に発生した悪性腫瘍を「肉腫」(Sarcoma)といいます。なお、上皮細胞に発生した悪性腫瘍を指す狭義の「癌」、血液や骨髄細胞ががん化(悪性化)した血液腫瘍、そして肉腫を含め、広義の「がん」といいます。
発生頻度と特徴
肉腫は希少がんに該当し、日本では年間10万人あたり、骨の肉腫は1人、脂肪や筋肉、神経、血管など軟部の肉腫は3人と予想されています。大腸がんや胃がん、肺がんなど患者数の多いがん種と比べ50分の1から100分の1の発生頻度しかないものの、その組織型の種類は50種以上で悪性度も様々であることから、肉腫の特徴は希少性と多様性ということができます。
日本では、骨の肉腫と軟部の肉腫の発生割合は概ね1対3です。骨の肉腫で最も多いのは骨肉腫(約35%)、次いで軟骨肉腫(約18%)です。軟部の肉腫で最も多いのは脂肪肉腫(約30%)で、次いで未分化多型肉腫(約18%)です。肉腫は四肢、体幹、頭頸部のどこにでも発生する可能性があります。
また、肉腫は小児から高齢者まで年齢を問わず発生しますが、組織型によっては発生年齢に偏りが認められ、脂肪肉腫は高齢者に、滑膜肉腫は若齢に多いというデータもあります。さらに最近では、15歳から29歳までのいわゆるAYA(Adolescents and Young Adults)世代に多いことが注目されており、しかもAYA世代の方が他の年齢層の患者集団よりも予後不良との報告もあります。
診断・検査
多様性に富んだ肉腫の診断は、生検による正確な病理組織検査が必須です。組織片を採取することもできる針生検は、診断率がやや低くなるという欠点があり、確実に組織が採取でき診断率も高い切開生検は、手技上、腫瘍播種の可能性をゼロにすることができません。2cm以下の皮下腫瘍の場合は切除生検で取り除くことができます。
いずれも大きな手術ではないものの、技術と経験を要する難しい手術とされ、診断不一致を回避するためにも専門施設での実施が推奨されます。
病期分類
肉腫の病期分類は、原発腫瘍の大きさ(T)、所属リンパ節の転移の有無(N)、遠隔転移の有無(M)、および組織学的悪性度(G)によりステージIからステージIVに分けられています。
全般的に、リンパ節や遠隔臓器に転移がないステージIとステージIIの肉腫は外科的切除で治癒する可能性が高く、「全国軟部腫瘍登録」によると、5年生存率は85%を超えています。原発腫瘍が大きく悪性度が高い、もしくは所属リンパ節転移があるステージIII、または遠隔転移があるステージIVの肉腫は切除不能で、化学療法や放射線治療などで病勢をコントロールする必要があります。
肉腫が転移する臓器は肺が多く、MRIなどの画像診断で転移を確認し、原発巣のみならず転移巣の切除可能性も検討します。
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