・本試験は18歳以上のHER2陽性進行性肺腺がん患者に対して3週間に1回カドサイラ単剤療法を投与し、有効性、安全性を検証した第II相試験である
・本試験の主要評価項目である全奏効率(ORR)は44%(95%信頼区間:22%-69%)を示し、事前に設定した主要評価項目基準を達成した
・カドサイラ投与により発症した主なグレード1または2の治療関連有害事象(TRAE)はインフュージョンリアクション、血小板減少症、そして肝臓トランスアミナーゼ上昇であった
2018年7月10日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてHER2陽性進行性肺腺がん患者に対する抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体であるトラスツズマブ エムタンシン(商品名カドサイラ;以下カドサイラ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第II相試験(NCT02675829)の結果がMemorial SloanKettering Cancer Center・Bob T. Li氏らにより公表された。
本試験は、18歳以上のHER2陽性進行性肺腺がん患者(N=18人)に対して3週間に1回カドサイラ3.6mg/kg単剤療法を病勢進行または継続不可能な有害事象(AE)が発症するまで投与し、主要評価項目として全奏効率(ORR;10%以下で試験中止、40%以上を主要評価項目達成基準)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、治療関連有害事象(TRAE)発症率などを検証した第II相試験である。
肺がん患者の約2%はHER2陽性であるため、HER2を標的にした治療薬の効果が期待されている。しかし、過去の臨床試験で有効性が検証された抗HER2阻害薬であるダコミチニブ、ネラチニブ、アファチニブは奏効を示すが、その奏効率は0%~19%と低かった。そこで、本試験では抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体のカドサイラの有効性が検証された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値64歳(47-74歳)。性別は女性72%(N=13人)。喫煙歴はあり61%(N=11人)、なし39%(N=7人)。Karnofsky Performance Status(カルノフスキー パフォーマンス ステータス;KPS)は90%が39%(N=7人)、80%が44%(N=8人)、70%が17%(N=3人)。
治療歴中央値は2レジメンで、その内訳は0レジメンが3人、1レジメンが5人、2レジメンが4人、3レジメンが3人、4レジメンが3人。HER2標的薬の前治療歴は50%(N=9人)で、その内訳はネラチニブ39%(N=9人)、アファチニブ11%(N=2人)、トラスツズマブ11%(N=2人)。
本試験の結果、主要評価項目である全奏効率(ORR)は44%(95%信頼区間:22%-69%)を示し、事前に設定した主要評価項目基準(≧40%)を達成した。また、奏効持続期間(DOR)中央値は4ヶ月(95%信頼区間:2-9ヶ月)、初回奏効期間中央値は2ヶ月(95%信頼区間:1-4ヶ月)であった。また、副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は5ヶ月(95%信頼区間:3-9ヶ月)であった。
一方の安全性として、主なグレード1または2の治療関連有害事象(TRAE)はインフュージョンリアクション、血小板減少症、そして肝臓トランスアミナーゼ上昇であった。なお、グレード4の治療関連有害事象(TRAE)、ならびに治療関連死亡は確認されなかった。
以上の第II相試験の結果よりBob T. Li氏らは以下のように結論を述べている。”抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体であるカドサイラはHER2陽性進行性肺腺がん患者に対してポジティブな有効性を示しました。そして、本試験はHER2陽性肺がん患者に対して抗HER2標的薬の有効性を証明した最初の試験です。”
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