10月19日から23日までドイツ・ミュンヘンで開催されたESMO2018 で、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(キイトルーダ)が、上皮内(CIS)腫瘍またはCIS+乳頭状腫瘍を有する治療歴のある高リスク筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC;本記事では初期膀胱がんと記す)患者(コホートA)を対象とした第2相試験(KEYNOTE-057、NCT02625961)の中間解析の結果がエラスムスMCがん研究所泌尿生殖器がん実験的全身治療グループのリーダーであるRonald de Wit氏らによって報告された(abstract #864O)。免疫チェックポイント阻害薬の初期膀胱がんに対する第2相試験結果は初のことである。初期膀胱がんについては、以下を参考のこと。
この試験の主要評価項目の中間解析では、現在の標準治療であるBCG療法が不応となり、根治的膀胱切除術が適さないか根治的膀胱切除術を拒否した患者において、キイトルーダ投与開始後3カ月の完全奏効(CR)率は38.8%(95% CI:29.4~48.9)(n=103)となった。
KEYNOTE-057は、BCG療法が不応となり、根治的膀胱切除術が適さないか、根治的膀胱切除術を拒否した高リスク初期膀胱がん患者に対するキイトルーダ単独療法を検討する第2相試験となる。この試験の主要評価項目は、CR率(コホートAのみ)と無再発生存率(コホートBのみ)。副次的評価項目は安全性と奏効期間となる。
目標登録患者数は、CISまたはCIS+乳頭状腫瘍を有する患者(コホートA)(n=130)およびCISを伴わない乳頭状腫瘍を有する患者(コホートB)(n=130)の2つのコホートで260例となる。いずれのコホートの患者にもキイトルーダ(200 mgの固定用量を3週間ごとに1回投与)を再発、疾患進行または許容できない毒性が認められるまで、あるいは疾患進行のない場合は最大24カ月後まで投与する。
この試験では、十分なBCG療法を行っても初期膀胱がんの持続または再発したがん、または十分なBCG導入療法を行ってもStageの進展したがんを「BCG療法が不応となった高リスク初期膀胱がん」と定義した。米国がん合同委員会(AJCC)によるTNM分類でT1、high-grade TaまたはCISと診断された患者を高リスクと判断した。
今回、発表されたデータは、CISまたはCIS+乳頭状腫瘍を有する患者(コホートA)(n=103)の中間解析で得られたものとなる。投与開始後3カ月のCR率は38.8%(95% CI:29.4~48.9)(n=40/103)となった。投与開始後3カ月の非CR率は55.3%(95% CI:45.2~65.1)(n=57/103)であり、初期膀胱がんの持続(CISまたはCIS+乳頭状腫瘍)、初期膀胱がんのStageの進展(投与開始前のCISまたはCIS+high-grade TaからT1への進行)または膀胱外病変がみられた。
解析の時点では、奏効例の72.5%で奏効が持続し(n=29/40)、25%でCRの達成後に再発がみられた(n=10/40)。再発がみられなかった患者1例は試験治療を中止し、別の治療を開始した。コホートAでは筋層浸潤性または転移性尿路上皮がんはみられなかった。カプランマイヤー法では、投与開始後3カ月時点でCRを達成した患者のうち80%でCRが6カ月以上持続した。奏効期間の中央値にはまだ到達していない(範囲:0カ月以上~14.1カ月以上)。追跡期間の中央値は14.0カ月(範囲:4.0~26.3カ月)だった。
本試験におけるキイトルーダの安全性は、これまでの試験においてキイトルーダを単独投与した患者で報告されたものと一貫していた。治療との関連性が否定できない有害事象は63.1%の患者に認められた。治療との関連性が否定できない有害事象のうち高頻度に認められたもの(発現率5%以上)は掻痒感(10.7%)、倦怠感(9.7%)、下痢(8.7%)、甲状腺機能低下症(5.8%)および斑状丘疹(5.8%)だった。治療との関連性が否定できないグレード3~5の有害事象は13例(12.6%)に認められ、治験責任医師により治療との関連性が否定できないと判定された死亡は1例に認められた。
Ronald de Wit氏は「これまで高リスク筋層非浸潤性膀胱がんの治療選択肢は限られており、再発した場合には、多くの患者さんが唯一の選択肢である手術に頼らなければなりませんでした。また、高リスク筋層非浸潤性膀胱がんのうち、約40%が筋層浸潤性膀胱がんに移行します。今回のKEYNOTE-057のデータは、治療が難しく、手術が適さない膀胱がん患者さんの励みになります」と述べた。
なお、Keynote-057試験は日本も参加しており、現在も被験者募集中であるため、興味がある方はオンコロまで問い合わせてほしい。
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