・併存疾患があり治療歴のない慢性リンパ性白血病患者が対象の第3相試験
・ベネトクラクス+ガザイバ併用療法の有効性・安全性を比較検証
・クロラムブシル+ガザイバ併用群に比べ、無増悪生存期間などを改善した
2019年5月31日から6月4日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019)にて、併存疾患があり治療歴のない慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対する一定投与期間のBCL-2阻害薬であるベネトクラクス+抗CD20抗体オビヌツズマブ(商品名ガザイバ;以下ガザイバ)併用療法の有効性、安全性が検証された第3相のCLL14試験(NCT02242942)の結果がUniversity Hospital CologneのKirsten Fischer氏らにより公表された。
CLL14試験とは、併存疾患があり治療歴のない慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対してベネトクラクス+ガザイバ併用療法を投与し、その後ベネトクラクス単剤療法を投与する群(N=216人)、またはクロラムブシル+ガザイバ併用療法を投与し、その後クロラムブシル単剤療法を投与する群(N=216人)に1対1の割合で振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、微小残存病変(MRD)陰性達成率を比較検証した国際多施設共同非盲検第3相試験である。
本試験が実施された背景として、併存疾患があり治療歴のない慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対する標準治療であるクロラムブシル+ガザイバ併用療法は無増悪生存期間(PFS)中央値31ヶ月と報告されている。本患者に対するベネトクラクス+ガザイバ併用療法は第1b相試験でもその有効性が示されており、期待のできる治療法である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
ベネトクラクス+ガザイバ併用群=72歳
クロラムブシル+ガザイバ併用群=71歳
積疾患評価尺度(CIRS)
ベネトクラクス+ガザイバ併用群=9
クロラムブシル+ガザイバ併用群=8
腫瘍崩壊症候群(TLS)発症リスク
ベネトクラクス+ガザイバ併用群=Low 13%、Intermediate 64%、High 22%
クロラムブシル+ガザイバ併用群=Low 12%、Intermediate 68%、High 20%
遺伝子変異
ベネトクラクス+ガザイバ併用群=陰性61%、陽性38%、不明1%
クロラムブシル+ガザイバ併用群=陰性59%、陽性40%、不明1%
TP53遺伝子変異
ベネトクラクス+ガザイバ併用群=陽性12%
クロラムブシル+ガザイバ併用群=陽性12%
del17p遺伝子変異
ベネトクラクス+ガザイバ併用群=陽性9%
クロラムブシル+ガザイバ併用群=陽性7%
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。追跡期間中央値28ヶ月時点における主要評価項目である24ヶ月無増悪生存率(PFS)はベネトクラクス+ガザイバ併用群88%に対してクロラムブシル+ガザイバ併用群64%、ベネトクラクス+ガザイバ併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを65%(HR:0.35,95%信頼区間:0.23-0.53,P<0.0001)有意に改善した。なお、細胞遺伝学的高リスク患者(IGHV未変異、TP53変異)に対してもベネトクラクス+ガザイバ併用群の有用性が確認された。
以上のCLL14試験の結果よりKirsten Fischer氏らは以下のように結論を述べている。”併存疾患があり治療歴のない慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対するベネトクラクス+ガザイバ併用療法は、クロラムブシル+ガザイバ併用療法に比べて無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、完全奏効率(CR)、微小残存病変(MRD)陰性達成率を改善しました。”
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