・FOLFIRINOX療法非適応の未治療転移性膵がん患者が対象の第3相試験
・術後化学療法としてのナブパクリタキセル+ゲムシタビン併用療法の有効性・安全性を検証
・独立評価委員会判定の無病生存期間は達成できなかった
2019年7月3~6日までスペイン・バルセロナで開催されたthe ESMO World Congress on Gastrointestinal Cancer 2019(WCGC2019)にて、FOLFIRINOX療法非適応の未治療転移性膵がん患者に対する術後化学療法としてのナブパクリタキセル+ゲムシタビン併用療法の有効性、安全性を検証した第3相のAPACT試験(NCT01964430)の結果がSan Raffaele Scientific InstituteのMichele Reni氏らにより公表された。
APACT試験とは、FOLFIRINOX療法非適応の未治療転移性膵がん患者に対する術後化学療法として28日を1サイクルとしてナブパクリタキセル125mg/m2+ゲムシタビン1000mg/m2併用療法を6サイクル投与する群、または28日を1サイクルとしてゲムシタビン1000mg/m2単剤療法を6サイクル投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として独立評価委員会判定の無病生存期間(DFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、安全性、EORTC QLQ-C30、QLQ-PAN26評価に基づくQOLなどを比較検証した第3相試験である。
本試験が実施された背景として、転移性膵がん患者の術後5年生存率はわずか20%程度であり予後が非常に不良であり、術後化学療法の治療成績を向上させる必要がある。他の臨床試験では、転移性膵がん患者に対するナブパクリタキセル+ゲムシタビン併用療法の全生存期間(OS)中央値は8.7ヶ月に対してゲムシタビン単剤療法は6.6ヶ月、ナブパクリタキセル+ゲムシタビン併用療法で全生存期間(OS)を統計学的有意に改善することが示されている(P > .001)。以上の背景より、本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値38.5ヶ月、6サイクル完遂率70%(ナブパクリタキセル+ゲムシタビン群66%、ゲムシタビン群71%)時点の結果は下記の通りである。主要評価項目である独立評価委員会判定の無病生存期間(DFS)中央値はナブパクリタキセル+ゲムシタビン群19.4ヶ月に対してゲムシタビン群18.8ヶ月、両群間で統計学的有意な差は確認されなかった(ハザード比:0.88,95%信頼区間:0.729-1.063,P=0.1824)。
一方で、治験医師判定の無病生存期間(DFS)中央値はナブパクリタキセル+ゲムシタビン群16.6ヶ月に対してゲムシタビン群13.7ヶ月、ナブパクリタキセル+ゲムシタビン群で病勢進行または死亡(DFS)のリスクを18%統計学的有意に改善した(ハザード比:0.82,95%信頼区間:0.694-0.965,P=0.0168)。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はナブパクリタキセル+ゲムシタビン群40.5ヶ月に対してゲムシタビン群36.2ヶ月、ナブパクリタキセル+ゲムシタビン群で死亡(OS)のリスクを18%改善(ハザード比:0.82,95%信頼区間:0.680-0.996,P=0.045)する傾向を示すも、現時点のデータは未成熟であった。
一方の安全性として、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はナブパクリタキセル+ゲムシタビン群86%に対してゲムシタビン群68%を示し、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)は下記の通りである。血液関連有害事象(AE)としては好中球減少症でナブパクリタキセル+ゲムシタビン群49%に対してゲムシタビン群43%、非血液関連有害事象(AE)としては疲労でナブパクリタキセル+ゲムシタビン群10%に対してゲムシタビン群3%を示した。
以上のAPACT試験の結果よりMichele Reni氏らは以下のように結論を述べている。”FOLFIRINOX療法非適応の未治療転移性膵がん患者に対する術後化学療法としてのナブパクリタキセル+ゲムシタビン併用療法、主要評価項目である独立評価委員会判定の無病生存期間(DFS)を達成できませんでした。しかしながら、FOLFIRINOX療法非適応の未治療転移性膵がん患者に対する治療選択肢になり得る可能性はあり、全生存期間(OS)のデータが成熟した時点の解析結果を待ちたいと思います。”
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