・FGFR変異を有する局所進行/転移性尿路上皮がん患者を対象とした第2相試験
・エルダフィチニブ単剤療法の有効性・安全性を検証
・客観的奏効率は40%、奏効持続期間の中央値は5.6ヶ月だった
2019年7月25日、医学誌『The New England Journal of Medicine 』にて線維芽細胞成長因子受容体をコードする遺伝子(FGFR;以下FGFR)変異を有する局所進行/転移性尿路上皮がん患者に対するFGFR1~4のチロシンキナーゼ阻害薬であるエルダフィチニブ単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相試験(NCT02365597)の結果がInstitut Gustave Roussy and University of Paris-SaclayのYohann Loriot氏らにより公表された。
本試験は、FGFR変異を有する局所進行/転移性尿路上皮がん患者に対して28日を1サイクルとして1日1回エルダフィチニブ6~10mg単剤療法を投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などを検証した非盲検下の第2相試験である。
本試験が実施された背景として、尿路上皮がんにおいてFGFR変異は高頻度に確認されており、FGFR変異がある場合は免疫介入に対する感受性が低い可能性が示唆されている。以上の背景より、第1相試験にてFGFR変異を有する患者に対して抗腫瘍効果が確認されている、FGFR1~4のチロシンキナーゼ阻害薬であるエルダフィチニブ単剤療法の有用性が本試験で確認された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
68歳(36-87歳)
ECOG Performance Status
スコア0=51%
スコア1=42%
スコア2=7%
治療歴
化学療法後の病勢進行を経験=88%
前治療歴なし=12%
免疫療法後の病勢進行を経験=22%
前治療歴レジメン数
0レジメン=11%
1レジメン=45%
2レジメン以上=43%
臓器転移
あり=79%
なし=21%
クレアチニンクリアランス値
60ml/min未満=53%
60ml/min以上=47%
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は40%(95%信頼区間:31%-50%)、奏効の内訳は完全奏効率(CR)3%、部分奏効率(PR)37%、病勢安定率(SD)39%を示した。また、奏効持続期間(DOR)中央値は5.6ヶ月(95%信頼区間:4.2-7.2ヶ月)、初回奏効時間(TTP)中央値は1.4ヶ月を示した。
また、前治療歴別の客観的奏効率(ORR)は化学療法後の病勢進行を経験した患者群で40%、前治療歴なしの患者群で42%、免疫療法後の病勢進行を経験した患者群で59%。前治療歴レジメン数別の客観的奏効率(ORR)は0レジメンの患者群で36%、1レジメンの患者群で38%、2レジメンの患者群で38%、3レジメンの患者群で60%、4レジメン以上の患者群で50%であった。
副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は5.5ヶ月(95%信頼区間:4.2-6.0ヶ月)、12ヶ月無増悪生存率(PFS)は19%(95%信頼区間:11%-29%)。全生存期間(OS)中央値は13.8ヶ月(95%信頼区間:9.8ヶ月-未到達)、12ヶ月全生存率(OS)は55%(95%信頼区間:43%-66%)を示した。
一方の安全性として、全グレードの有害事象(AE)発症率は100%、グレード3または4の有害事象(AE)発症率は67%を示した。最も多くの患者で確認されたグレード3または4の有害事象(AE)は低ナトリウム血症11%、口内炎10%、無力症7%であった。なお、治療中止に至った原因で最も多かったのは病勢進行(PD)であった。
以上の第2相試験の結果よりYohann Loriot氏らは以下のように結論を述べている。”FGFR変異を有する局所進行/転移性尿路上皮がん患者に対するFGFR1~4チロシンキナーゼ阻害薬エルダフィチニブ単剤療法は、客観的奏効率(ORR)40%を示しました。また、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)発症率は半数以上の患者で確認されました。”
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