進行非小細胞肺がんで腫瘍遺伝子変異量が高レベルの患者の健康関連QOLを改善
進行非小細胞肺癌で腫瘍遺伝子変異量が高レベル(10変異/メガベース以上)の患者に対し、1次治療としてのニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)とイピリムマブ(商品名ヤーボイ;以下ヤーボイ)の併用療法は、化学療法と比べて患者報告による健康関連QOL(HRQOL)を改善することが、非盲検、フェーズ3のランダム化比較試験CheckMate-227から示された。
目次
試験概要
CheckMate-227試験は複数のパートで構成され、パート1の部分では、IV期または再発の非小細胞肺がん。
化学療法未施行、既知のEGFR/ALK遺伝子変異がなく、ECOG パフォーマンスステータス 0-1の患者を対象に、オプジーボとヤーボイの併用療法、オプジーボ単剤(PD-L1陽性例)またはオプジーボ+化学療法(PD-L1陰性例)、化学療法を比較した。化学療法は、組織型に基づき、白金系抗癌剤を含む化学療法薬2剤の併用とされた。
評価方法
主要評価項目の1つである、腫瘍遺伝子変異量が高レベルの患者における無増悪生存期間は、オプジーボ+ヤーボイ群の化学療法に対して
42%病勢進行または死亡リスクを減少(HR=0.58)させ、有意かつ臨床的意義のある延長が示されたことがすでに報告されている(米国癌学会2018)。
今回は、腫瘍遺伝子変異量が高レベルの患者において、1次治療としてのオプジーボ+ヤーボイと化学療法がHRQOLに及ぼす効果が解析評価され、結果が報告された。
患者報告アウトカム(PRO)は、ベースラインの評価は1サイクル目の1日目に行い、治療中の評価は最初の6カ月間は各治療サイクルに合わせ、オプジーボ+ヤーボイ群は2週毎、化学療法群は3週毎に行い、その後は6週毎に102週目まで行った。治療後の評価は、追跡のための受診時に2回行った。
評価に用いた指標
PROの評価に用いた尺度は、肺癌症状尺度(LCSS)とEQ-5D(3-level)だった。
LCSSには、平均症状負荷インデックス(ASBI、咳や呼吸困難、疲労感など6つの特異的な症状)と3-item global index(3-IGI、症状による苦痛、活動への障害、健康関連QOL)が含まれる。
一方、EQ-5D(3-level)には、5項目の健康状態(移動の程度、身の回りの管理、痛み/不快感など)を3水準で評価する5項目法と、視覚評価法(VAS)が含まれる。
有効性
PROの完遂率は、全対象では臨床試験登録時で両群ともに93%、治療中の評価でも全て80%を上回り、腫瘍遺伝子変異量が高レベルの患者も同様だった。
腫瘍遺伝子変異量が高レベルの患者におけるベースラインからの変化の平均をみると、オプジーボ+ヤーボイ群では、LCSS ASBI/3-IGIおよびEQ-5D VASにおいて、迅速かつ意義のある改善が持続的に示された。
LCSSでは、肺癌患者で多くみられる疲労感、呼吸困難の改善が早期かつ持続的にみられた。
LCSS ASBIにおけるベースラインからの変化の平均は、オプジーボ+ヤーボイ群は-7.2、化学療法群は2.0となり、オプジーボ+ヤーボイ群で良好だった。
腫瘍遺伝子変異量が高レベルの患者において、12週の時点までに症状の悪化を認めたのは、オプジーボ+ヤーボイ群は139人中31人(22.3%)、化学療法群は160人中56(35.0%)、絶対リスク減少率は12.7%であった。
LCSS ABSIで評価した治療中または追跡中の最初の悪化までの期間も、オプジーボ+ヤーボイ群は化学療法群と比べて延長しており、悪化リスクを60%減少(HR=0.40)となった。
LCSS 3-IGIの評価でも悪化リスク44%(HR=0.56)となった。
さらに、LCSS ASBIで評価した最初の改善までの期間も、オプジーボ+ヤーボイ群では化学療法よりも短く、改善までの期間中央値は二ボルマブ+イピリブマブで5.6カ月、化学療法は未到達だった。
まとめ
今回の結果について、患者報告によるHRQOLが改善し、進行NSCLCで腫瘍遺伝子変異量が高レベルの患者に対する1次治療としてオプジーボ+ヤーボイに、さらなるエビデンスが加わったと結論付けられた。
リサーチのお願い
この記事に利益相反はありません。